ヘルマン・ミンコフスキーはアインシュタインの特殊相対性理論に対してミンコフスキー空間と呼ばれる4次元的表示法を考案した。彼は1909年1月12日に45歳で早世しますが、それまでに特殊相対性理論に関係して三つの講演・著述を残した。
文献2と3.は、1911年にD.Hilbertが編集したミンコフスキーの論文集にも収録されている。この論文集は友であるHilbertがミンコフスキーの早世を惜しんで編纂したものです。
また文献3.は1913年にA.SommerfeldとO.Blumenthalが編集した相対性理論の論文集にも収録されている。
これらの論文は極めて難解です。そのため、最初に別稿で引用するBorn「相対性理論」第Y章をお読み下さい。その後で本稿をご覧になり、最後にミンコフスキーの論文をお読みになるのが宜しいかと思います。その際、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」も同時に参照されて下さい。
この章は文献3.第2章§6“ミンコフスキーの4次元世界”(p47〜57)からの引用です。ただし、少し改変しています。また節題は当方が適当に追記した。
(1)相対論的運動学
(2)二次元時空に於ける世界点・世界線と“尺度曲線”
(3)ローレンツ変換
(4)時間の相対性と因果律
(5)座標値の変換(“尺度曲線”)
(6)長さの縮み
(7)時計の遅れ
下記で言及されている§4は別項「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」2.(5)で引用していますので、そちらをご覧下さい。
この事の証明は別稿2.(8)4.を復習されたし。
[補足説明]
s2=x2+y2+z2−u2 によって決まる“平坦な”4次元空間の計量は“擬ユークリッド的”と呼ばれる。これは s2 に表れる4つの(実の)座標の2乗が全て同じ符号を持つ“ユークリッド的”な場合と区別するためです。
また、後(3.(6)や4.(1)1.)で解る様に、この本ではミンコフスキー4次元時空の間隔をs2=−x2−y2−z2+u2 で定めている。
[補足説明1]
ここは解りにくい所なので補足する。まず上式を変形すると
となり、これをグラフにすると下図の様な直角双曲線になる。
しかしこの式のままでは解りにくいので、下図の様に直交する光の世界線OEとOHを取る。これは丁度XU軸を45°回転したものだから、その回転角45°を θ とすると下記の様な(x,u)と(e,h)の変換公式が得られる。これを用いると
このときA点は常に2eh=1を満足する点ですが、A点(x,u)は常にx2−u2=1 を満足する点であることが解る。実際、 h=1/2e を変換公式に代入して計算すると x2−u2 は常に1となることが解る。
つまり図の双曲線上の点Aは常にx2−u2=1を満足する点なのです。
このとき同様にしてx2−u2=22、x2−u2=32、x2−u2=42,・・・・を満足する双曲線が描けるが、これらの双曲線群がミンコフスキー時空の座標の長さを定める尺度曲線です。もちろんこれらの曲線は2eh=22、2eh=32、2eh=42、・・・・を満足する双曲線です。
そしてこれらの尺度曲線に依って座標値を定めることが、以下に説明されているx2−u2を用いて計量するということの意味です。
[補足説明2]
上記の結論は以下の事を意味している。
上記の様に光の世界線に対して共役に取った座標軸UX、U’X’、U”X”、・・・は、x2−u2=x’2−u’2=x”2−u”2=・・・を計量として用いると互いに垂直な座標軸であり、任意の事象Aの時空値を測定する座標系となる。
そして、後で解るようにこれらの座標軸で測った座標値はローレンツ変換で結び付けられている。
[補足説明1]
ここで上記の“等角をなす”について補足する。別稿「ローレンツ変換とは何か」3.(4)で注意したように、この事は光の世界線が直交している場合のみ言えることで、もし光の世界線を直交するように設定していなかったら等角にはならない。
また、新しいx’軸とu’軸は上記の様に簡単に求まるが、問題はその軸上での目盛り(つまり尺度)がとうなるかです。このことについては2.(5)で説明される。
[補足説明2]
ローレンツ変換を用いると
が常に成り立つ。そのためx’2−u’2=0なら当然x2−u2=0が成り立つ。
すでに注意したように、この事は光の世界線が直交している場合のみ言えることで、もし光の世界線を直交するように設定していなかったら等角にはならない。そのことについては、別稿「ローレンツ変換とは何か[Einsteinのローケンツ変換導出法への補足]」3.(4)を参照されたし。
ここは解りにくいところです。別項ランダウ、リフシュツ著「場の古典論」第1章§2もご覧下さい。
[補足説明1]
ここはミンコフスキー座標の解釈で最も重要なところであると同時に最も解りにくいところです。
ここでは、A’とB’という特殊な点しか確認していないが、K系とK’系で同じ事象を示すもっと一般的な点PについてK系での座標値とK’系での座標値がローレンツ変換によってどのように結び付けられているかを確認する必要がある。
この点については別稿江沢文献の2.4.1が解りやすいので参照されたし。そこをご覧になれば解るように、図中の双曲線は、それと各座標軸の交点が同じ座標値であることを示す単なる補助線(“尺度曲線”)以上の意味はない。
これらの式は、別稿江沢文献の2.4.1で求めた式(2.4.2)にx’=1を、あるいは(2.4.1)式にct’=u’=1を代入したものと同じです。
[補足説明2]
後で示される第35図について補足する。
上左図に於いて、直角双曲線の性質より四角形OhAeと四角形Oh’A’e’の面積は等しいことが言えます。この事は、OE軸とOH軸が直角ではない双曲線に付いても成り立つことが証明できます。例えばこの図の上で考えてみて下さい。
次に上図右の平行四辺形OxCuと平行四辺形Ox’C’u’の面積が等しいことも言えます。なぜなら平行四辺形OxCuの面積は四角形OhAeの面積の2倍であり、平行四辺形Ox’C’u’の面積は四角形Oh’A’e’の面積の2倍だからです。このことは、ABA’B’が双曲線上の点だから対角線AB→対角線A’B’の縮小率の逆数で対角線OC→対角線OC’を拡大していることからも明らかです。つまり、、平行四辺形OxCuから平行四辺形Ox’C’u’への変形はその面積が等しくなるように生じる。
このことが尺度曲線上のOAの長さとOA’の長さが等しく、OBの長さとOB’の長さが等しいことの意味です。また、それらの値を用いて得られる距離/時間=OA/OB=OA’/OB’=c(光速度)が常に同じ値になる(“光速不変の原理”を示す)ことの意味です。
ここは別稿江沢文献2.4.2(p61)も参照されたし。
ここは別稿江沢文献2.4.2(p62)も参照されたし。
この章は文献3.第3章からの引用です。ただし、少し改変しています。また(1)(2)(3)(4)(9)節を細分した項の題目は当方が適当に追記した。
(1)指標記号、総和に関する規約、座標の変換
1.指標記号
2.総和に関する規約
3.座標の変換
(2)スカラー、ベクトル、テンソル
1.スカラー
2.ベクトル
3.テンソル
(3)テンソルの加法・減法・乗法および縮約
1.加法・減法
2.テンソルの性質
3.乗法
4.縮約・内積
(4)テンソルの商法則
1.商法則
2.商法則の応用
(5)相対テンソル(テンソル密度)
(6)基本計量テンソル
(7)随伴テンソル(指数の上げ下げ)
(8)双対テンソル
(9)テンソルの微分・勾配・発散・回転
1.勾配
2.発散
3.回転
行列式については、別稿で引用した行列式の導入、行列式、行列式の性質、余因数、Cramerの公式、行列式の積を復習されたし。ここはCramerの公式をご覧下さい。
[補足説明1]
4行4列の行列式の直接計算は面倒なので、1行目に関して余因数展開して確認する。
ここは、余因数の定理10をご覧下さい。そこで説明されているように行列式の性質の定理7より明らか。ただしそこではAをaで表していることに注意。
ここは余因数の定理10をご覧下さい。
上記の式変形は、行列式の積の定理13を参照。
[補足説明2]
ここで群について説明する。(岩波「理化学辞典」より引用)
集合Gの任意の元a、bに関して算法(law of composition)c=ab、c∈Gが定義され、次の3法則を満たすときGは“群”であるという。
1.Gの任意の元a、b、cに対して(ab)c=a(bc)となる(結合法則)
2.Gに元eがあって、Gの任意の元aに対しae=ea=aとなる。eをGの単位元(unit element)という。
3.Gの任意の元aに対しある元a’がGにあって、aa’=a’a=eとなる。a’をaの逆元といい、ふつうa-1と書く。
この3法則のもとでは単位元eもaの逆元a-1も一意に定まる。さらに可換法則ab=baが成り立つときは可換群という。算法が加法である可換群を加群という。群Gが有限個の元からなるときは有限群、そうでないとき無限群という。Gの部分集合HでGの算法に関して群になるものをGの部分群(subgroup)という。
Gの任意の部分集合Sに対し、Sの元のべきSn(n=0、1、…)全体はSを含む最小の部分群である。これをSによって生成された部分群という。SがGの1つの元からなる場合は巡回群である。群Gの元の個数をGの位数(order)といい、元aによって生成される巡回群の位数をaの位数という。
環、体、線形空間などの代数系や線形変換などの変換は、いずれも“群”の性格をもつ。
[補足説明]
空間の同一点を示す座標値は座標系が異なれば当然異なります。そのため、空間の同一点における f 値が同一になるためには、f(x)の関数形とf’(x’)の関数形は異なります。上記の
f’=f はその関数形が等しいことを意味するのでは無いことに注意されたし。各座標系での関数形に各座標系での座標値を代入した値が等しいことを意味する。
[補足説明1]
上記の2箇所の赤波線部分について補足します。
全空間にわたって同一の変換係数 Ah'h で変換される場合(つまり Ah'h が定数)であるユークリッド空間やミンコウスキー空間(擬ユークリッド空間)については両方の赤波線部が正しい。
しかし、リーマン空間の様に Ah'h が座標の関数となるような場合には xh 自身は反変ベクトル成分と見なすことはできなくなります。そのような空間では dxh の方しか反変ベクトルの成分とは見なせません。このことは「テンソル解析学」6.(1)2.で説明していますので参照して下さい。
[補足説明2]
∂f/∂xi の表し方は本によって様々です。そのことについて「テンソル解析学」6.(3)1.[補足説明]で説明しています。
すなわち、クロネッカーのデルター(単位テンソル)は1次の共変・1次の反変の混合テンソルです。
テンソルの和、差、積に関しては別稿「微分幾何学」3.(2)4.もご覧下さい。
[補足説明]
上記赤波線部分に関しては3.(2)3.中程の説明を参照されたし。また別ページの説明も参照されたし。
[例]
テンソルの商法則については別稿「微分幾何学」3.(2)6.もご覧下さい。
[例]
[補足説明]
ミンコフスキー時空の基本計量テンソルは、ミンコフスキー時空内での座標変換であるローレンツ変換に対してその値を変えませんが、リーマン時空の基本計量テンソルは、その時空中での座標変換によって、その値を変えます。このことについては別稿「テンソル解析学」6.(1)3.[注意]や別稿「微分幾何学」3.(2)2.[補足説明3]を参照。
[補足説明]
ここの定義の説明だけでは、何故相対テンソル(テンソル密度)なるものを導入しなければならなのか理解に苦しまれると思います。このことについては、シュレーディンガーの論文「時空の構造(Space-Time Structure)」(1950年)をお読み下さい。この論文は
湯川英樹監修、内山龍雄訳「シュレーディンガー選集2」共立出版(1975年刊)
として訳本がありますので、これのp22〜をご覧下さい。
[例1]
ミンコフスキー時空に於けるローレンツ変換ではα=1になることは3.(1)3.[補足説明]参照。ただし、一般のリーマン時空に置ける座標変換ではα=1とはなりません。
[例2]
εkjih は4次(4階)共変相対テンソル、εkjih は4次(4階)反変相対テンソルです。“相対テンソル”(テンソル密度)は変換行列式(αやα-1など)が掛かることを別にすればテンソルと同様に変換しますが、普通のテンソルではありませんので“擬テンソル”という言い方がされる場合もあります。
上記の様に成分が定義されていますのでkjihの指数の全てについて交代(反対称)です。このように定義された相対テンソルのことを“Levi-Civitaのテンソル密度(相対テンソル)”と呼ぶ。
[補足説明]
εkjih は4階共変相対テンソル、εkjih は4階反変相対テンソルですから、4×4×4×4=256個の成分からなります。
そのうちkjihの指数に同じものを含む場合が全て0だということです。それが“その他の場合”として示されているものです。つまり、kjihの指数の全てが互いに異なるもののみが0以外の値を持つ。
kjihの指数の全てが互いに異なる成分の数はその順列の数4×3×2×1=4!=24個です。その24個の成分の値を次のように決めている。kjihが1234から偶数回の指数の入れ替えでできる成分は+1に、kjihが1234から奇数回の指数の入れ替えでできる成分は−1にする。偶順列とは二つの指数の入れ替えを偶数回(0回も含む)行ったとき得られる順列のことであり、奇順列とは奇数回の入れ替えで得られる順列このとです。
0以外の値を持つ成分の数は指数の数が4個の1234の場合4!=4×3×2×1=24通りの順列の数ですが、その全てを書き出すと下記のようになります。
下図のピンク色が+1、空色が−1です。それ以外はすべて0です。
結局、この“完全反対称相対テンソル”εkjih の独立な成分は1あるいは−1の1つだけです。この事については別稿「対称テンソルと反対称テンソルの独立成分の数」2.を御覧下さい。
“Levi-Civitaのテンソル密度”と行列式との関係をもう少し補足する。
行列式
の値は行列式の計算で習うように
となる。ここで、上下に二度表れる指数については総和をとるという“アインシュタインの規約”を適用している。
つまり行列式の値は“Levi-Civitaのテンソル密度”をつかって表現できる。さらにこの表現式を使えば行列式の性質の全てが簡単に証明できる。
以下の説明で行列式を表すとき、“Levi-Civitaのテンソル密度”のこの性質を用いる。
[例3]
もう少し詳しく言えば完全交代(完全反対称)4階共変テンソルです。
もう少し詳しく言えば完全交代(完全反対称)4階反変テンソルです。
[補足説明]
ここは、3.(4)2.[例]を復習されたし。ミンコフスキー時空の基本計量テンソルは座標に依存しない定数テンソルですが、リーマン時空の基本計量テンソルは座標と共に変化します。
その当たりについては別稿「テンソル解析学」6.(1)3.[注意]や別稿「微分幾何学」3.(2)2.[補足説明3]を参照してください。このことを真に理解するためには別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」2.(6)をご覧下さい。
世界間隔の定義の符号が2.(1)の定義と逆になっていますが、本稿では今後ここでの定義を用いることにする。符号に関しては任意性があり、ここと反対の符号で定義している本も多いので、他書を読まれるときには注意して下さい。
以下で出てくる“余因数”についてはこちらを参照。また、“行列式のよく知られた性質”については別稿「余因子行列と逆行列の関係」を参照。
[補足説明]
ここは何を言っているのか解りにくいが、要するに別稿「余因子行列と逆行列の関係」1.(3)で説明されている“余因子行列をもとの行列の行列式で割ったものは元の行列の逆行列になる。”という性質を利用して、gjiの逆行列であるgihを定義しているだけです。このようにして定義したgihは次に証明されているように反変テンソルとなります。
ここは別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分(計量テンソル・クリストッフェル記号・共変微分とは何か)」2.(3)と(4)を参照されたし。
ここは、“基本計量テンソル”を乗じることによって指標を上げ下げして共変・反変の関係を変更できる事を言っている。反変や共変の関係を変えたからと言って、そのテンソルは同一の幾何学的・物理的対称を表しています。このことに付いては別稿「基底ベクトル・双対基底ベクトルと反変成分・共変成分」2.(4)をご覧下さい。
つまり、任意のテンソルに“基本計量テンソル”を乗じることによって生じるテンソルをもとのテンソルに“随伴なテンソル”と言う。
そして、“基本計量テンソル”とは“ミンコフスキー空間”の性質を表すテンソルで、別稿「微分幾何学」3.(2)2.[補足説明3]で説明したのと類似な(今はそこと違って微小変位ベクトルではなく変位ベクトルによる)手順
で導入定義されたもの以外の何者でもありません。
上記ソンソル ekjih と ekjih については3.(5)[例3]を復習されたし。
“随伴という操作”を計量テンソルで行ったが、似たような操作を上記のテンソルで行ってみようと言うことです。
つまり、任意のテンソルにekjih、あるいはekjihを乗じる事によって生じるテンソルをもとのテンソルに“双対なテンソル”という。
[補足説明0]
ここで注意して欲しい事は、任意のテンソルに基本計量テンソルを乗じてもとのテンソルに“随伴なテンソル”にしたからと言って、それが元のテンソルとは異なった幾何学的・物理的な別なテンソルに成るわけではありませんでした。
それと同様に、任意のテンソルに ekjihやekjih を乗じてもとのテンソルに“双対なテンソル”にしたからと言って、それが元のテンソルと幾何学的・物理的に別なテンソルに成るわけではありません。
このことについては別稿「アインシュタイン著「一般相対性理論の基礎」(1916年)」B.(11)3.[補足説明1]をご覧下さい。要するに、幾何学的・物理的に同一のテンソルを表現するための座標系(基底ベクトル・双対基底ベクトルの間の変換を含めて)を替えてみると言うだけです。
ここで説明した事の意味は4.(2)2.[補足説明4]の例をご検討頂ければ了解して頂けると思います。そこのFji=Tjiと、その双対なテンソル*Fjiは全く同一の電磁場テンソルを表しています。ただ、その成分表示状況が異なるだけです。
つまり、(1,0)型テンソルに“双対なデンソルを作る操作”を施せば(0,3)型つまり4次元3階共変完全反対称(交代)テンソルとなる。完全反対称テンソルですから独立な成分は上記の4個しかありません。
[補足説明1]
そうなることは、εkjih について3.(5)[補足説明]の順列
を参照したらすぐに解ります。εkjihの添字kjihの中に同じものがある成分はすべて0となるのだから、添字がすべて異なる成分の項のみを考慮すれば良い。
実際
となる。
3次の交代共変テンソルとは、 *Tijk において指数 ijk の中に同じ数字の並びがあるものは全て 0 となり、指数 ijk の任意の入れ替えで符号が逆転するものです。だから独立な成分は 4×3×2/3×2×1=4個 の成分しか在りません。上記の4個がそれに相当します。詳しくは4(2)2.[補足説明2]を参照されたし。
*Tijk は3階テンソルなので、行列形式で表示することはできません。
つまり、(0,3)型でしかも交代なテンソルに“双対なデンソルを作る操作”を施せば(1,0)型テンソルとなる。
[補足説明2]
そうなることは3.(5)[補足説明]の順列を参照したらすぐに解る。ただし、2回表れる指数については“アインシュタインの規約”に従って和を取っていることに注意。3組の指標に対して和を取っているので3!で割っている。
例として *T1 を計算してみると
となります。他の *T2、*T3、*T4 も同様です。
これは1階のテンソルなので行列表示できる。
つまり、(2,0)型でしかも交代のテンソルに“双対なデンソルを作る操作”を施せば(0,2)型の交代テンソルとなる。
[補足説明3]
これは2階テンソルなので行列表示できる。
同じ指数が2回表れるものについては“アインシュタインの規約”に従って和を取ることに注意して、εkjih についての3.(5)[補足説明]順列一覧表を参照しながら、書き記すと
となる。2!で割るのは、“アインシュタインの規約”に従って2組の指標に対して和を取っているからです。
このとき、2階反対称(交代)テンソルの独立な成分の数は6個である事に注意されたし。
また、この重要な例を4.(2)2.[補足説明4]で見るでしょう。
つまり、(0,2)型でしかも交代のテンソルに“双対なデンソルを作る操作”を施せば(2,0)型の交代テンソルとなる。
[補足説明4]
上記を行列表示すると
となる。
[補足説明1]
ここでは、座標変換の変換係数Ah'hは座標xh’やxhに依存しない定数であることに注意。もちろん座標変換係数は、座標系xh'と座標系xhが異なれば変化しますが、座標値そのものには関係しないと言うことです。そのため任意のテンソルをその座標xh'やxhで偏微分したものも、そのまま(共変指数が1つ多い)テンソルになります。
ただし、この様なことが言えるのは、“特殊相対性理論”のローレンツ変換に従うミンコフスキー時空座標の様に変換係数が(Vの関数ではあるが)座標の関数でない場合です。
第6章、第7章で議論する“一般相対性理論”で取り扱う座標変換(変換係数は座標の関数となる)の場合には、“微分”あるいは“微分係数”の定義をもっと拡張(そこでは“共変微分”と“共変微分係数”と呼ばれる)しないと、座標で偏微分したものが、そのままテンソルの性質を保持することはありません。この当たりは6.(1)3.および6.(3)、あるいは別稿「微分幾何学」3.(3)を参照して下さい。
だから、以下第4章までの議論は特殊相対性理論の範囲に限った話であることを忘れないで下さい。
[補足説明1]
ここの説明は解りにくいので補足する。
前半で述べている∂ivk は、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」4.(4)6.で説明した“直積”による操作で生じるテンソルを意味します。つまり、共変ベクトル(∂1,∂2,∂3,∂4)と反変ベクトル(v1,v2,v3,v4)の直積で一つの混合テンソル Tihができる事を意味している。すなわち
のことです。以下の説明に於いて指数が異なるものが並べて記載されている場合は、常にその様に考えて下さい。
一方、後半で述べている∂ivi は、共変指標の編微分操作と反変ベクトル(v1,v2,v3,v4)の反変指標の縮約ですから、スカラーとなります。その様な操作を“発散”と呼んでいるのです。
[補足説明2]
微分操作の共変指数は反変指数とでないと縮約できませんから、後半で述べた“発散”は反変ベクトルに対してしか定義できません。だから、共変ベクトルの“発散”を考えるには、あらかじめ共変ベトクルに反変計量テンソルgijを乗じて反変ベクトルにしておかなければ成りません。この当たりは別稿3.(2)[補足説明5]などで説明しました。
それに対して前半で述べた“直積”という微分操作は反変ベクトルに対しても共変ベクトルに対しても定義できます。反変ベクトルに対して行うと2階混合テンソル ∂ivk となります。また共変ベクトルに対して行なうと、次項の最初に述べられている∂jwi のように2階共変テンソルとなります。
[補足説明1]
上記の “Tji が交代テンソル場であれば ∂kTji+∂jTik+∂iTkj は交代テンソル場となる。”の証明は以下のとおり。
[証明]
まず、∂kTjiが3階共変テンソルになることは上記[補足説明]と同じように考えればよい。次に同形(3階共変テンソル)の三つの成分要素を加えたものは同型(3階共変テンソル)となることは3.(3)1.“加法・減法”より明らか。
次にこれが交代テンソルになることを証明する。
[証明終]
ここは何を言っているのか解りにくいと思いますので、4.(2)2.の具体的な例をご覧の後にもう一度振り返られてください。
[補足説明2]
ミンコフスキー時空よりも一般のリーマン時空では、gji,gjiは座標の関数となり定数ではなくなります。そのとき、リーマン時空では[補足説明1]で注意した様に、微分の概念も普通の意味では成り立たなくなり、“共変微分”というものに拡張しなければならなくなります。
共変微分に拡張すると、gji,gjiが定数でなくとも、[gji,gjiによる指標の上げ下げ]と[“共変微分”演算]とは交換可能です。このことは6.(3)6.で証明します。
この章は文献3.第4章の引用です。解りやすくなるように少し改変しています。また各節を細分した項の題目は当方が適当に設定した。
(1)相対論的運動学
1.線素と固有時
2.4元速度ベクトル
3.4元加速度ベクトル
(2)電磁方程式のテンソル方程式化
1.電磁ポテンシャル
2.マクスウェル方程式系の4元化(その1)
3.マクスウェル方程式系の4元化(その2)
4.電荷保存則
5.ローレンツ力
6.電磁エネルギー運動量テンソル
7.エネルギー保存則と運動量保存則
(3)相対論的力学
1.質点の運動方程式
2.運動量ベクトルと質量
3.エネルギーと慣性質量
4.物質エネルギー運動量テンソル
本節は、別稿「4元速度(4元運動量、4元電流密度)、4元加速度と4元力」と比較しながら読まれると理解しやすいです。
[補足説明1]
ミンコフスキー時空は4次元空間であるが平坦で一様な空間です。つまり計量テンソルgjiが全空間にわたって変化せず同一です。そのため“擬ユークリッド空間”と言われる。
擬と付いているのは、計量テンソルgjiがユークリッド空間の場合と異なるからです。この言い方については2.(1)[補足説明]も参照されたし。
[補足説明2]
ユークリッド空間では距離は負の値を取ることはないが、ミンコフスキー時空の世界距離の2乗は正、負、0のいずれの値も取ることがある。そのため距離の2乗をs2で定義しても−s2で定義しても良い。
教科書により次の様に定義しているものも多い。
この様に定義すると基本計量テンソルは、本稿とは符号が反転して
となります。
このように定義した場合には、ミンコフスキー時空の基本計量テンソルの性質から、反変ベクトルと共変ベクトルの違いは第4成分の符号が異なるだけとなります。
もちろん時間座標を第0成分、空間座標を第1〜3成分としている場合は、第0成分の符号が異なるだけとなります。
3.(9)節の最初で述べた微分係数の定義を思い出されれば明らかな様に、不変量による微分(時間微分のような)ではそのテンソルの階数は変わらずそのままです。
つまり反変ベクトル(座標ベクトル)の時間微分はそのまま反変ベクトル(速度ベクトル)になります。
4元速度については別稿「4元速度(4元運動量、4元電流密度)、4元加速度と4元力」2.も参照されたし。
4元加速度は反変ベクトルである4元速度ベクトルのスカラー(時間)による微分であるから。当然反変ベクトルとなる。
4元加速度については別稿「4元速度(4元運動量、4元電流密度)、4元加速度と4元力」4.も参照されたし。
4元速度と4元加速度の直交関係については「4元速度(4元運動量、4元電流密度)、4元加速度と4元力」5.(5)も参照。
さらに付け加えると、これはローレンツ変換不変な量である。このことについては、「4元速度(4元運動量、4元電流密度)、4元加速度と4元力」4(3)3.を参照。
本節は、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル(ローレンツゲージ Lorenz gauge の由来)」(非有利化Gauss単位系)と比較しながら読まれると理解しやすい。
ただし、、本稿では“有利化Gauss単位系”(ローレンツ・ヘヴィサイド単位系)で論じられています。“有利化”されているために、4πの付き方が上記別稿と異なります。
この単位系については別稿「電磁気学の単位系が難しい理由」5.(4)2.をご覧下さい。
これらの電磁ポテンシャルについては別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」参照。
[補足説明1]
(−Ax,−Ay,−Az,φ)で定義する4元共変ベクトルがローレンツ逆変換と同じ変換を満たすことは証明が必要です。そのことは、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」3.(1)を参照して下さい。ただし、そこではローレンツ変換に従う“4元反変ベクトル”として定義しています。
また、ここの“4元共変ベクトル”との関係は、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」3.(1)[補足説明5]を参照して下さい。
そこと同じ共変ベクトルなのに、そこでは正負の符号が反対になり、φに c が掛かっています。そうなるのは第4成分の定義、及びミンコフスキー時空の計量テンソルの定義が本稿と違うからです。また単位系(有理化と非有理化)の違いも影響しています。
[補足説明2]
共変ベクトルの“回転”が交代共変テンソルになることは、3.(9)2.[補足説明1]を読まれた後に3.(9)3.を参照されたし。
また、3.(7)“随伴テンソル”で説明した様に、共変⇔混合⇔反変の関係は“基本計量共変テンソル” gij あるいは“基本計量反変テンソル” gij を乗じて上げ下げしたい添字について縮約することで任意に変更できます。その当たりは別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」4.(4)5.の説明を参照して下さい。
さらに、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」5.(2)[補足説明1]と[補足説明2]は重要です。
同じ交代(反対称)共変テンソルの“電磁場テンソル”でも、上記別稿の定義では電場の項に c が掛かっていますが、それは微分の第4成分の定義がここと違って1/cを含ませていないからです。
[補足説明3]
上記の“電磁場テンソル”の“交代共変テンソル成分表示” Fji を行列表示すると
となる。
本稿では有理化Gauss単位系(E-H対応系)を採用している事を忘れないこと。
[補足説明1]
ここでまず、“Fji が交代テンソル場であれば ∂kFji+∂jFik+∂iFkj は交代テンソル場となる。”は3.(9)3.[補足説明1]で証明した。
このとき注意して欲しいのですが、これは3階共変テンソルなので2階テンソルの様に“行列表現”で表すことはできません。また、“テンソル方程式”を4.(2)3.の ∂jFji=si の様な列ベクトル(演算子)と行列の積の形で表すこともできません。
このテンソルは4×4×4=64個の成分を持ちます。その(k,j,i)成分 Tkji が ∂kFji+∂iFkj+∂jFik であるということです。そして、上記のテンソル方程式は、その全ての成分が 0 であることを示している。
また上記の“4次元のテンソル方程式の右辺が 0 ならば、このテンソル方程式はローレンツ変換不変な式である。”についてですが、3.(2)3.の後半で説明したように、テンソルが 0 である事はどの座標から見てもかわりませんから、上記のマクスウェル方程式はローレンツ変換不変になります。
さらに、“方程式がテンソル形式で表されていたらローレンツ変換に対して不変である。”についてですが、それはもともとテンソルとは座標変換(あるいは座標逆変換)と同じように変換されるものだからです。このことについてはこちらも参照。そのとき、テンソルやベクトルの物理方程式中での関係で、共変と反変の区別が出てきたのでした。この当たりは別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」4.(1)〜(4)の説明をご覧下さい。
[補足説明2]
上記のTkji=∂kFji+∂iFkj+∂jFik についてもう少し補足します。これは64個の成分を持つと言いましたが、指数kjiの任意の2つを入れ替えるとその符号が逆転する“完全交代テンソル”です。それはFjiが“交代テンソル”だからです。2階共変テンソルFjiが交代テンソルならばTkji=∂kFji+∂iFkj+∂jFikが完全交代の3階共変テンソルになることは別稿「ミンコフスキーの4次元世界」3.(9)3.[補足説明1]を参照して下さい。
そのとき、Tkjiの指数だけを取り出して全て並べてみると
となります。このとき、同じ指数を持つ成分(図でピンク背景を持つもの)は、Tkjiが完全交代テンソルであることから全て 0 になります。そのため残るのは24成分となります。
残った24成分のなかで、任意の二つの数字を入れ替えただけのものは符号が逆転するだけですから、もとのテンソル方程式の形(右辺が0となる)としては独立では無いので取り除けます。図で水色の背景を持つものがそうです。結局残ったものを書き出すと以下の12成分になります。
この中で黄色の背景を持つものは左端の添字を循環的に入れ替えたものです。もとのテンソル方程式の形から明らかなように、これらは左端と同じになります。このことは、黄色の背景を持つものは添字の入れ替えを2回繰り返えすと左端に一致するので、その反対称性から2回の符号の逆転で元に戻ることからも明らかです。
結局独立な成分は左端の指数を持つ4個だけになります。これが最初のMaxwell方程式の4式です。このことについては別稿「対称テンソルと反対称テンソルの独立成分の数」2.(2)もご覧下さい。
これは1234の4個の数字から順番を考慮することなく3個を選ぶ組み合わせの数 4C3=4×3×2/3×2×1=4 です。
[補足説明3]
4.(2)1.で述べたように電磁ポテンシャル(−Ax,−Ay,−Az,φ)は4元共変ベクトルだから(φ1,φ2,φ3,φ4)=φi と置ける。そのとき3.(9)3.で説明したように、共変ベクトル場を微分したものを下記の様に組み合わせたものは4元の“回転”と呼んで交代(反対称)2階共変テンソル場となるのでした。ここで取り上げたMaxwell方程式中の電磁場テンソル(4.(2)1.[補足説明3]参照)は、まさにその例です。
このとき、これを用いて前記の[補足説明2]で説明した指数の組み合わせからなる3階共変テンソルを作ってみれば、それは恒等的に0となることが解ります。実際、
が直ちにいえる。
さらに、このとき構成される3階共変テンソルが交代(反対称)テンソルであることも簡単に証明できます。実際一つの要素について計算して見ると
となります。他の3要素についても同様に証明できます。
いずれにしても、このように構成された3階共変交代(反対称)テンソル方程式は、マクスウェルの方程式
そのものを表している。
つまり、電磁ポテンシャルが基本的な物理量であり、電磁場が本節の最初4.(2)1.で述べた式により定められるものならば、マクスウェル方程式中の上記の二つは、電磁ポテンシャルによる電磁場の定義式から演繹的(数学的)・恒等的に直接導かれる。この立場では、物理的に意味があるのは次項で述べる2つの式(第2の組)だけということになる。(吉田伸夫著「完全独習相対性理論」講談社のp125参照)
もちろん上記2つの方程式が無意味だと言うことではなくて、最初の電磁ポテンシャルによる電磁場の定義式そのものが上記2つの式が示しているEとHの間で成り立つ物理法則を表しているのだからMaxwell方程4式中の上記2つは電磁ポテンシャルによる電磁場の定義式に置き換えられるということです。
ここの話は、別稿「Maxwell方程式形の先見性と電磁ポテンシャル」1.で説明した、Maxwellが“Treatiseの§615”に書き残した深謀遠慮に関係します。
[補足説明4]
上記の Fji に“双対なテンソル” *Fkh については3.(8)[補足説明4]をご覧下さい。Fji が交代共変テンソルですから、 *Fkh も交代反変双対テンソルになります。
具体的に書いてみると
となりますが、この形にすると、共変ベクトル(演算子)の列ベクトルと反変テンソルの行列を乗じて縮約した“行列表現”でベクトル方程式が表せます。
ここで、Fji=Tjiと、その“双対なテンソル”*Fjiは全く同一の電磁場テンソルを表しています。ただ、その成分表示状況が異なるだけです。このことの意味については3.(8)[補足説明0]をご覧下さい。
本稿では有理化Gauss単位系(E-H対応系)を採用している事を忘れないこと。
[補足説明1]
ここの計算は行列の積の形で表してみると解りやすい。すなわち
であるが、
すなわち
である。このとき
となる。
ここで注意して欲しいことは、上記の計算を
のようにすると
となることです。
つまり(Fji)と(Fji)はまったく異なったものになります。そしてこれらは対称テンソルでもなければ交代テンソルでもありません。
[補足説明2]
さらに補足します。ここで導いた電磁場テンソルの共変成分表現と反変成分表現は別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」5.(2)[補足説明1]で導いた反変テンソル、あるいは5.(2)[補足説明2]で導いた共変テンソルとちょうど符号が逆になっています。また第4列目と第4行目に c や 1/c の違いがあります。これらは、いずれもミンコフスキー時空の“基本計量テンソル”の定義の違いから生じることです。
以下の4元ベクトルの表現の違いもそこから生じます。このことについては、4.(1)1.[補足説明2]を復習されたし。
このことに関しては3.(7)を参照。
“これがローレンツ変換不変である”と言うことの意味は別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」5.(2)[補足説明1]を参照。
上記の計算手順が解りにくい方は別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」5.(2)[補足説明4]をご覧下さい。このことは、3次元電磁気学ではお馴染みの事です。別稿「マクスウェルによるアンペールの法則の拡張」2.を参照。
下記の“dxi/dsは4元単位ベクトルである”は4.(1)2.のこちらを復習されたし。
ここの説明は見通しが悪いので別稿のこちらを参照されたし。ただし、そこでは反変ベクトルと電磁場混合テンソルを用いた表現になっています。また計量テンソルの定義の違いもありますので、そこは注意して下さい。
同様に共変計量テンソルghiを乗じることによって共変型の電磁場テンソルFjiを混合型のテンソルFjiにすることができますので
の形で“ローレンツの力の法則”を表現することもできます。
実際、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」4.(2)で求めた表現はこちらのタイプです。そこでは4元電流ではなくて4元速度を用いており、[1行4列表示]ではなく[4行1列表示]であり、単位系は非有利化Gauss単位系であり、計量テンソルは空間部と時間部の符号を逆にした定義を用いてる違いはありますが、同じタイプの“ローレンツの力の法則”です。
[補足説明]
4元力の反変表現と共変表現をまとめておくと
となる。
本稿ではベクトルの反変表現と共変表現は、その第1〜3成分の符号が異なります。このとき4.(1)1.[補足説明2]で注意したように、s2の定義をs2=x2+y2+z2−c2t2で定義すると第4成分の符号が異なることになります。
ここでは、4元表示したMaxwell方程式を用いて一気に計算しています。一気に計算している分明快なのですが、その分何をしているのか解りにくい。別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」6.では、スカラー方程式とベクトル方程式を別々に計算して最終的に統合しています。そちらの計算の方が解りやすいと思います。
[補足説明1]
ここで注意して欲しいのですが、gji、gji は“対称テンソル”であり、 Fji、Fji は“交代(反対称)テンソル”ですが、 Fji、Fji は対称テンソルでも、交代(反対称)テンソルでもありません。
そのため、成分計算を“行列演算”のやり方で実行するときには、その当たりを見極めながらする必要があります。
[補足説明2]
更に補足しますと、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」4.(4)7.で注意したように基本計量テンソル(これは本稿独特なかなり特殊な定義です。普通は正負の符号はこの逆が多い。)
を任意のテンソルに乗じることで、反変・共変を変換することができるのでした。
このとき、ミンコフスキー時空の場合には、たまたま基本計量共変テンソルと基本計量反変テンソルは一致しますが、一般のリーマン空間(時空)ではそうなりません。
実際に、そうなっていることは4.(2)3.[補足説明1]で求めた
に、基本計量テンソルを乗じて確かめる事ができる。
例として実際に一つ計算してみると
となります。他も同様にして計算できます。
ただし、ここでも Fji と Fji は互いに異なったji成分〜を持つことに注意して下さい。
[補足説明3]
上記の計算を別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」5.(2)や6.(4)の計算と比較するときは、“4元ベクトル”の定義や“基本計量テンソル”の定義がここと違っていることに注意して下さい。
実際、そちらの稿では“4元ベクトル”の定義を下記右側のものを利用しています。(左側が普通良く使われる定義です。なぜ左側が良く使われるのかといいますと、第4成分にcを掛けたものを用いるとすべての成分の次元を同じにすることができるからです。しかし、本来第4成分は第1〜第3成分とは次元的に全く異なるものですから、上記別稿ではあえて右側のような次元の統一をしない形で論じています。そちらの方が理解しやすいと思うからです。左側表現について更に補足しますと、本稿の電流密度の定義は特殊で第1〜第3成分をcで割ってその次元を第4成分の次元である電荷密度に合わせています。)
ただし、これらは反変ベクトル表示の場合です。そのため添字のx,y,zは右肩に書くべきかも知れません。
共変ベクトルの場合は上記右側の表現の第4成分に−c2を乗じたものになります。(左側が普通良く使われる定義ですが、本稿では、特殊な計量テンソル定義を用いているため、普通の定義と符号が逆転しています。)
そのため、“ローレンツ変換式”の表現も下記右側のものを使用しています。S’系のS系に対する移動速度をVとしています。S’系はS系のx軸に沿って、その正方向へVで動くとしている。
そのため“ミンコフスキー時空”の“基本計量共変テンソル”と“基本計量反変テンソル”も下記右側の特殊なものを用いています。(左側が普通良く使われる定義ですが、本稿の定義は特殊でこれとは違うことに注意して下さい。)
これらの取り決めにより、種々の4元量の第4成分に表れる“c”や“1/c”の付き方が本稿と違ってきます。
特に、ここで示されている電磁場の2階テンソルの成分 Fij,Fij,Fij,Fij の表現が、上記別稿5.(2)[補足説明2]で示した様に
となります。本稿の表現と比較してみて下さい。
そのとき、以下の関係式はもちろん同じ様に成り立ちます。
[補足説明4]
上記のことについては、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」6.(4)[補足説明1]を参照されたし。両辺の左側から“基本計量反変テンソル” gji を乗じて縮約するだけです。その際、ミンコフスキー時空の gji は定数ですから gji による指標を上げる操作と微分演算子 ∂i は交換可能であることに注意されたし。
ただし、“行列表示”でgji と縮約したり、微分演算ベクトル ∂i と縮約するときは Tji と Tji の違いや Tji=Tij に気をつけて行う必要があります。 以下で、Tji 、 Tji 、 Tjiを導いておきます。4.(2)6.[補足説明2]で電磁場テンソルに対して行ったのと同様な手順に従えばよい。すでに求めた Tji から
となる。このとき Tji,Tji は“対称テンソル”ですが、 Tji,Tji は対称テンソルでもなければ交代(反対称)テンソルでもないことに注意して下さい。
これらの表現は、別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」6.(4)と少し違いますが、それは計量テンソルの定義の違いによる。
前項の最後で導いた(1)式と(2)式の意味を考える。
[補足説明]
ここの4.(2)6.から7.への説明は見通しが悪い。
別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」6.で、古典的な(つまり相対性理論以前の)電磁気学から出発して、ここと逆の順番で同じことを説明していますので、ご覧下さい。また、ランダウ、リフシュツ「場の古典論」第4章§32、§33も最小作用の原理から出発して見通しよく説明されていますので会わせてご覧下さい。
ただし、これらの参照先は“非有利化Gauss単位系”を用いて展開されていますので、式の中に4πが表れてきます。また“基本計量テンソル”の定義がここと異なっています。その当たりに注意してお読み下さい。
[補足説明1]
“方程式がテンソル形式で表されていたらローレンツ変換に対して不変である。”についてですが、もともとテンソルとは座標変換(あるいは座標逆変換)と同じように変換されるものだからです。このことについてはこちらも参照。
ただし、そのときテンソルやベクトルが物理方程式の中でどの様に関係するかで、共変と反変の区別が出てきます。この当たりは別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」4.(1)〜(4)の説明をご覧下さい。
[補足説明2]
この節の説明は少し解りにくいので別稿「相対論的力学」と「運動方程式のローレンツ変換不変性」を参照されながらお読み下さい。
上記の4.(2)5.はこちらを、4元電流ベクトル si については4.(2)3.の定義を参照。
この項は説明が不足しており、誤植もあるようです。その内に改訂する予定。
上記の電磁エネルギー運動量テンソルについては4.(2)6.を参照。