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 3.電磁輻射4,干渉5,回折6,屈折率の本質7,輻射減衰、光の散乱15,統計力学の原理

ファインマン物理学U「光、熱、波動」岩波書店(1968年刊)

本章は 第15章 統計力学の原理 からの続きです。

第16章 ブラウン運動

16-1 エネルギー等分配則




 等分配則の証明は江沢文献§22と、§23がとても解りやすい。ファインマン第15章の説明と比較しながら復習されたし。

 上記のアインシュタインの業績に付いては別稿「Einsteinのブラウン運動理論(1905年)とPerrinの検証実験」を参照。







例1.





 上記赤線部分の性質(“単振動体”の“運動エネルギーの平均値”と“位置エネルギーの平均値”は互いに等しい)については別稿「調和振動子」2.(3)を復習されたし。

 以上の例1.に付いては、別稿SommerfeldX.§24.Brown運動2.も参照されたし。そこで説明されている様にこの例1.の現象初等的にしかも相当正確“アボガドロ数”を決める為の一つの新しい方法を提供します。

例2.




 上記の“コイルに付随する運動エネルギー”は別稿「仕事とエネルギー」2.(5)2.を復習されたし。







 

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16-2 輻射の熱平衡









 上記の第7章§7.3の(7.8)式はこちらを復習されたし。
また、下記の 1/Q=γ/ω0§7.3の[補足説明2]以降を復習されたし。

[補足説明]
 別稿§7-3で説明されている様に

となります。
 要するに、γが小さい(Qは大きい)と1秒間に輻射されるエネルギーは小さくなる。そのため、振動体のエネルギーが1/eに減少する時間である1/γ(あるいはQ/ω値)は大きくなり、なかなか減衰しなくなる。


 上記で kT ではなく 3kT としていますが、これは後のp218の説明を先取りしているからです。
また、下記の(7.12)式は別稿§7.3を復習されたし。

 “古典的電子半径”については、別稿「線型振動子(電気双極子)による電磁波の放出」3.(2)1.[補足説明]を参照。





 下記の(7.19)式はこ別稿§7-5を参照されたし。










 以上の議論に付いては、是非別稿「線型振動子と電磁波の平衡」を復習されて下さい。




 

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16-3 エネルギーの均等分配と量子振動体









補足説明1
 Planckが証明した輻射公式は絶対温度が本質的な役割を果たしている。だから、Planckが行った熱力学のエントロピーの考察から入った証明が本質的なのです。だからこそエネルギー量子hν= の存在を発見できた。
 そこが本質なのに、そこのところを説明していないFeynmanの説明(これはデバイの説明の引用ですが)は物足りない。
 
 さらに補足しますと、これはEinsteinが光量子論の第2論文(1906年)の中で、Planckの理論の中に含まれているメカニズムとして最初に注意を促したものです。








補足説明2
 補足しますと、これはEinsteinが1907年に光量子論の第2論文(1906年)の中の考察を発展させて物質の比熱の量子論を展開する。
 実際のところ、(16.14)式はEinsteinが光量子論の第3論文(1907年比熱の理論)の中で“Planckの熱輻射分布則”を導いている手順とまったく同じです。





補足説明3
 ここで、ファインマンが説明している“Planckの熱輻射分布則”の導き方は、デバイが報告(P.Debye, Annalen der Physik, 33, p1427〜, 1910年)したものです。しかし、これは最初Einsteinが1906年に光量子論の第2論文(1906年)の中ので展開し、それを光量子論の第3論文(1907年比熱の理論)の中で発展させて導いているやり方そのものです。Debyeの論文は、それを少し書きかえたものです。
 
 この導き方とPlanckの導き方の違いは、絶対温度Tの“Planckの熱輻射分布則”への関わり方です。
 Planckは熱力学的考察から絶対温度と輻射場のエントロピーの関係を導き、そのエントロピーの解釈にBoltzmannの原理を用いて“Planckの熱輻射分布則”を導いた。
 一方、Einsteinは彼の1906年、1907年論文(Debyeの1910年論文もそうですが)で、(W.GibbsがMaxwellやBoltzmannが発展させてきた統計力学理論を参考にしてそれを更に発展させた)アンサンブル理論を用いた(当時のEinsteinはGibbsの仕事を知らず、独自にその理論を展開していた)。その統計的理論とエネルギー量子仮説を統合して“Planckの熱輻射分布則”を導いた。このEinsteinのやり方については広重徹 著 『物理学史U』 9-4.“アンサンブルの理論”15-3.“光量子と比熱”の前半部 を参照。
 
 上で述べたようにGibbsの仕事を知らずGibbsとは独立に、Einsteinは1902〜1904年にかけて発表した三部の連作論文で、正準集団についての統計力学を展開した。この三部論文とその内容については、江沢洋「統計力学へのアインシュタインの寄与」をご覧下さい。
 
 いずれにしても、EinsteinやGibbsが導いた正準理論の本質は、それぞれの自由度に分配されるエネルギーが等分配ではなく、その自由度のエネルギー値に応じた重み付き(存在確率付き)で分配されることです





 

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16-4 酔歩の問題





補足説明0
 以下でFeynmanが展開している説明はEinsteinのやり方と少し違いますが、Sommerfeldによると、これはLangevinが創めた方法(Comptes redus 1908年,p530〜)だそうです。
 ただし、以下の[補足説明1]〜[補足説明3]で注記している様に、それぞれの部分がEinsteinのそれぞれの部分の議論に相当します。確かに、Langevinの方法はエレガントですが、Einsteinの議論の方がより本質を明らかにしている様に思います。

補足説明1
 以下は別稿「Einsteinのブラウン運動理論とPerrinの検証実験」2.§4に相当。





補足説明2
 以下は別稿「Einsteinのブラウン運動理論とPerrinの検証実験」2.§3に相当。







 上式については別稿「Einsteinのブラウン運動理論とPerrinの検証実験」2.§4.[補足説明5]を参照されたし。






補足説明3
 以下は別稿「Einsteinのブラウン運動理論とPerrinの検証実験」2.§5に相当。



補足説明4
 まず、上記の説明を補足します。
 ボルツマン定数:k=R/N0=気体定数/アヴォガドロ数 でが、この中の気体定数は様々な方法で測定できていましたから、ボルツマン定数kが測定できる事はアボガドロ数N0を測定できることと同じです。
 すなわち、微細粒子のブラウン運動を観測して任意時刻tにおける〈R2〉の値を測定できればアボガドロ数が測定できます。ブラウン運動の観察はアボガドロ数を決定する方法の内の一つです。
 また、その様にして決定されたアボガドロ数が、それ以外の方法で決定されていた値と良く一致したので、逆にアインシュタインのブラウン運動理論の正当性が検証されたのです。
 
 
 次に、kを決定する為の(16.21)式に付いて補足します。
 この式中のk以外はすべて観測・測定可能な量です。ただしμの決定は、なかなか困難です。μは先ほど述べたやり方で決定するのですが、Fの測定が一般に簡単ではありません。Fはブラウン運動粒子の質量や大きさや形状に関係します。その為、その大きさと質量(物資密度と言っても良い)が解っており、それらの値が同一で粒のそろった極微細な球形粒子を多量に準備しなければ成りません。そして、それらの質量、大きさを精密に測るやり方を開発しなければなりません。コロイド化学の専門家だったPerrinは、独創的な方法を幾つも開発してその事をやり遂げたと言うことです。
 
 
 更に補足します。(16.21)式を導くとき、ブラウン運動粒子に対して“エネルギー等分配則”を用いています。しかし、ブラウン運動粒子は、それまでに議論されてきた等分配則が成り立つ原子・分子レベルの粒子に比べてはるかに巨大です。その様な巨大粒子に対しても“エネルギー等分配則”が適用できる保証などありません。
 その様な巨大粒子に対しても適用できるとしたところにEinstein理論の卓見があるのですが、このことが正しいのかどうかは、実験的に検証されねばなりません。Perrinは、そのあたりも的確に見極めており、それを検証する実験をしています。その事に付いては別稿「第15章 統計力学の原理」§15-1[補足説明1][補足説明2]をご覧下さい。
 
 
 いずれにしましても、そのあたりの詳細については別稿「Einsteinのブラウン運動理論とPerrinの検証実験」4.をご覧下さい。あるいはSommmerfeld「理論物理学講座」第U巻§7の後半や、第X巻§24などをご覧頂くのも有益かもしれません。 

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