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エネルギー保存則を運動方程式を用いて証明します。幾つかの例を用いて説明しますので、どこに運動の法則(第二法則と第三法則)が用いられているか読み取って下さい。
エネルギーそのものについては別稿「仕事とエネルギー」をご覧下さい。また、運動の法則との関係は「運動の法則、運動量保存則、エネルギー保存則の関係」をご覧下さい。
例として状態1と状態2との間で成り立つエネルギー保存則を証明する。これは別稿「ニュートンの運動方程式」3.(2)で述べた質量に働く力F=−mgが一定値になる場合の例である。そのときの公式Dを用いれば直ちに求まる。これは高校物理の物体の「鉛直投げ上げ」でおなじみである。
以下の様に展開すると、数学的には難解だが物理的には明瞭になる。投げ上げられた物体に対する運動の第二法則より
作用反作用の法則は−mgの所に使われていると考えればよい。
つまり物体は最初(1/2)mv12の運動エネルギーを持っていたが−mgh2の負の仕事(−mgの方向は速度とは逆向き)をされて、エネルギーは(1/2)mv22に減ってしまう。そのとき、−mgh2を左辺に移項することはそれが重力場に正の仕事をして重力場にmgh2のエネルギーが蓄えられたと考えれば良いことを意味する。
加速度aがxの関数で表されていたのでは、それを時間積分しておもりの速度や位置を求めることはできない。速度vや位置xを求めるためにはaを時間tの関数に変換しなければならない。
幸いにも、この系のおもりが単振動することは別稿「ニュートンの運動法則」3.(3)で証明しており、x、v、aを時間の関数として求めている。そこでの結論F、G、Hを用いればよい。ただし今は最大変位x1から出発するので式の時間軸の原点をt=π/2ωだけずらす必要がある。
となり、状態1と状態3との間でエネルギー保存則が成り立つことが証明された。このやり方では、どこに第二法則、第三法則が利用されているかなかなか見通せないが、1.と同様に以下の様に展開するとよく解る。
おもりに対する運動の第二法則より
作用反作用の法則は−kxの所に使われていると考えればよい。
つまり物体が最初に持つ運動エネルギーはゼロだが、力−kxによって仕事(−kxの方向は物体の運動方向に一致する場合もあれば反対向きの場合もある)をされて、運動エネルギー=(1/2)mv32 を持ったと考える。そのとき、−kxの反作用である力kxはバネに負または正の仕事をする。そのためバネのエネルギーは (1/2)kx12−(1/2)kx32 だけ変化したと考えればよい。これは最初バネが持っていた (1/2)kx12 のエネルギーが時刻t3では一部が物体の運動エネルギー=(1/2)mv32 として、残りがバネのエネルギー=(1/2)kx32 として蓄え直されたことを意味する。
これは高校生には難しい。この場合振り幅が小さい単振り子の近似が使えないのできちんと解かねばならない。
となり、状態1と状態3との間でエネルギー保存則が成り立つことが証明された。第三法則がどこに利用されているかなかなか解らないが、右辺の−mgsinθを積分する中に重力場に対する作用反作用の仕事が取り込まれていると考えればよい。
保存力の場から生じる力は、保存力の場をV(x,y)とすると別稿「保存力について」で述べたように
が言える。そのために
となる。これが保存力の場から力を受けて運動する質点が満たすべきエネルギー保存則の形である。
上記の“常套手段”については、別稿「調和振動子」1.と、そこの[補足説明]をご覧下さい。
更に、別稿「楕円軌道の発見と万有引力の法則」4.(2)1.[補足説明1]で引用しているエネルギー積分や、別稿「ブラックホール近傍の力学」3.(1)2.なども参照して下さい。