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行列式と行列(determinant and matrix)

 占部実、光藤富士男編「代数・幾何教科書」共立出版社(1964年刊)の第4章、第5章からの引用です。ただし、解りやすくする為にかなり改変しています。これに続く第6章は別稿「座標変換と2次形式」で引用していますので適宜ご覧下さい。

1.行列式
    (1)行列式の導入
        1.二元連立1次方程式
        2.三元連立1次方程式
        3.行列式と面積
        4.行列式と体積
        5.練習
    (2)n次の行列式
        1.偶順列と奇順列
        2.行列式の表現
    (3)行列式の性質
        1.行と列の入れ替えに対して等価
        2.行列式の性質
        3.
    (4)余因数
        1.小行列式と余因数
        2.余因数と小行列式の関係
        3.余因数展開
        4.例(Vandermondeの行列式)
        5.練習
    (5)Cramerの公式
        1.連立1次方程式
        2.連立1次同次方程式
        3.補足
        4.Jordanの解法
        5.
        6.練習
    (6)行列式の積
        1.行列式の積
        2.連立1次同次方程式
        3.
        4.練習
    (7)章末演習問題

2.行列
    (1)行列とその演算
        1.行列とは
        2.行列の加法と減法
        3.行列の定数培
        4.行列の乗法
        5.練習
    (2)特殊な行列
        1.転置行列、対称行列、交代行列
        2.対角行列、単位行列
        3.
        4.練習
    (3)逆行列
        1.行列の除法と逆行列
        2.行列の除法と積の交換可能性
        3.練習
    (4)行列の階数と連立1次方程式
        1.一般の連立1次方程式
        2.行列の階数
        3.rankの性質
        4.
        5.練習
    (5)連立1次方程式
        1.rankと解の関係
        2.解法の実際
        3.
        4.練習
    (6)線形写像と行列
        1.線形写像
        2.線形写像と行列
        3.線形写像と連立1次方程式
        4.直交変換と直交行列
        5.
        6.練習
    (7)章末演習問題

3.参考文献

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1.行列式

)行列式の導入

.二元連立1次方程式

 

.三元連立1次方程式    [目次へ]






 一般的な場合の公式は1.(5)1.の定理11で求める。そこの公式と比較してみられたし。

補足説明   (文献4.より) 
 上記説明の様に、“行列式”の理論はもともと連立1次方程式を解く手法として始まった。その紀元は古く9世紀頃のインドの数学・天文学者ブラーマゲプタの書や、その後の関孝和「解伏題之法(1683年)こちらも参照」やライプニッツの書などにもその萌芽が見られる。そして行列式を一般的に定義し、その性質を論じ始めたのはクラーメル(Cramer)です。
 “行列式”を表す“deternimant”という語句はガウスが二次形式の理論において、今日“判別式”(detrminant)といっているものにつけた名称ですが、コーシーが行列式をその様に呼ぶことにして以来今日ではその名称が定着している。
 
 歴史的には“行列式”の理論がはるかに先行しており、“行列”の理論はケーリー(Cayley)の1858年の論文から始まる。
 “行列”を表す“matrix”という名称はシルヴェスタ(Sylvester)が付けたもので、彼は invariant、covariant、contravariant、eliminant、なども名付けた。
 日本語で“行列”と名付けたのは高木貞治あたりに始まるようです。

 

.行列式と面積    [目次へ]


 ここは、別稿「ベクトルの内積と外積の成分表示」2.(4)[補足説明1]と[補足説明2]を参照されたし。

 

.行列式と体積    [目次へ]


 ここは、別稿「ベクトルの内積と外積の成分表示」2.(5)2.を参照されたし。

 

.練習    [目次へ]

 

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(2)n次の行列式

.偶順列と奇順列



 上記の“第2章の証明”とは下記のこと。


 ここは、解りにくいので、n=4の場合を例示すると下記の様になる。

 上記の様に、4個の異なるものから作られる順列は全部で4!=24個あります。

補足説明  (文献3.より)
 順列について以下の事が言える。

さらに、以下の事も言える。

 

.行列式の表現    [目次へ]


 上記の ijk・・・・m1〜n の整数を一列に並べたものです。

補足説明
 別稿「ミンコフスキーの4次元世界」3.(5)[例2]で説明する様に、上記のεは、“完全反対称n階相対テンソル”個の成分 とみなすこともできます。そのときには上記のn!の成分以外はすべて 0 と見なすことになる。
 その様に見なしたε“Levi-Civitaのテンソル密度”と呼ぶ。


 

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(3)行列式の性質

以下で行列式の基本的な性質を説明する。

.行と列の入れ替えに対して等価

 

.行列式の性質    [目次へ]

 定理3により、以下に述べる定理はすべて列に関しても成り立つ列に関しての定理をまとめたものはこちら)。



定理6



 

.例    [目次へ]



 

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(4)余因数

 “余因数”“余因子”と言う場合もある。

.小行列式と余因数


補足説明1
 上記の式変形は解りにくいので例で示すと



の様になる。



補足説明2
 先ほどの例で余因数を示すと

となる。

 

.余因数と小行列式の関係    [目次へ]


 このように、11の場合はたまたまですが、“余因数”“小行列式”は一致します。


 この様にすると、1.(3)2.で説明した行列式の性質定理6により、行列式Dは以下と等価となり

 となる。

補足説明1
 先ほどの例で示すと

の様になります。

補足説明2  (文献3.より)
 ここは解りにくいので補足します。
 まず、1.(2)1.[補足説明]の公式により以下の事が言えます。

あるいはこれに1.(3)1.の定理3を組み合わせて

となる。
 これが言えれば、任意のα行中のβ列における要素αβに関して以下のことが言える。[拡大版]

 これはα行について展開していますが、β列についても同様に展開できます。

 

.余因数展開    [目次へ]

 前項1.(4)2.[補足説明2]で説明した様に、行列式Dは余因数Aαβを用いて展開できる。

 (5)、(6)式はさらに一般化して次の様に表現しても良い。

 この定理10は、1.(5)1.の定理11の証明に用います。

 

.例    [目次へ]









 

.練習    [目次へ]


 (3)を、定理8に関して適用した後に、余因数展開の方法を用いて解く。

 (4)を、1.(2)2.で説明した定義に従った方法で計算する。




 この方法はとても煩雑なので、余因数展開で求めた方が良い。この行列式の余因数展開は1.(4)1.〜2.ですでに求めているのでその結果を用いると

となる。

 

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(5)Cramerの公式

.連立1次方程式


 ここで1.(4)3.の定理10を繰り返し用いることにより






 これは1.(1)1.〜2.で求めた公式の一般化になっていることに注意されたし。

 

.連立1次同次方程式    [目次へ]


 この逆が成り立つことは、1.(6)2.の定理14で証明する。

補足説明  (文献3.より)
 定理12は次の形で使用される場合が多い。


 

.補足    [目次へ]


 上記[例5]はこちら

 上記1.(3)3.[例1]はこちら

 上記次節の証明はこちら

 

.Jordanの解法    [目次へ]

 

.例    [目次へ]

 以下の[例5]は、1.(5)2.[補足説明]で説明した形の定理12についてのものです。

[補足説明]

 ここは何が言いたいのか解らないと思います。2.(5)を学ばれた後で振り返られて下さい。

 

.練習    [目次へ]

 

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(6)行列式の積

.行列式の積

 次の定理はとても重要です。また、証明が込み入っていますので、[補足説明1]を参照されながらお読み下さい。


 下記で用いる1.(3)2.の定理4はこちら。ここの証明手順は重要です。



 上記で用いた1.(3)3.の例2はこちら。この定理は2.(1)4.の定理1の証明に用いる。

補足説明1
 定理13(証明)は解りにくいので、n=3の場合を例に取って説明します。[拡大版はこちら]





 以上はaijについて展開した証明ですが、bijについて展開しても同様に証明できます。
それについては [こちらの拡大版] を御覧下さい。
 
 n=2の場合は、さらに解り易くなって下記のようになります。(文献3.より)

補足説明2  (文献3.より)
 定理13に類似の以下の定理も成り立つ。



補足説明3  (文献3.より)
 上記[補足説明2]の定理を用いて定理13証明することもできる。




 

.連立1次同次方程式    [目次へ]

 ここで1.(5)2.の定理12の逆が成り立つことを証明する。

 上記いいかえのための“1次従属”の性質は2.(4)2.[補足説明]の[例3]を参照。上記の別証定理8系はこちら

 このように表現できることは、n次元ベクトル空間における1次独立なベクトル ・1,a・2,・・・,a・n と,一次独立な基底ベクトルの組 ,e2,・・・,e を考えて、互いに互いを成分表示できることを考えたら明らか。

 

.例    [目次へ]




 下記で用いる定理14の系はこちら

注意 (C)の左辺の行列式をf(x),g(x)の“終結式”という。

[補足説明]  (文献3.より)
 [例6]は解りにくいので具体的な例を用いて少し違った角度から説明する。

 下記で用いる1.(5)2.の[補足説明]はこちら


 次の[例7]は重要です。別稿「余因子行列と逆行列の関係」1.(2)を読まれると下記証明が理解しやすい。

 下記証明で用いる1.(4)3.定理10の(7)式はこちら


 ここは、2.(3)1.[補足説明2]を参照されたし。

 

.練習    [目次へ]

 

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(7)章末演習問題


 

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2.行列

)行列とその演算

1.行列とは

“行列”とは以下に述べる“演算の定義”とセットになって初めて定義できる量です。

 

.行列の加法と減法    [目次へ]


 

.行列の定数倍    [目次へ]



 

.行列の乗法    [目次へ]




 この定理の前提として、
  (結合法則)に関しては、Aの列数とBの行数は等しく且つ、Bの列数とCの行数は等しい。
  (分配法則)に関しては、Aの列数とB及びCの行数は等しい。
  (分配法則)に関しては、A及びBの列数とCの行数は等しい。
は当然成り立たっている事に注意して下さい。


 次の 定理1 は重要です。

 上記の証明に用いる1.(6)1.定理13はこちらですが、“正方行列”どうしの積の場合は、“行列式”の積の成分計算式と同じに成りますから、上記の定理1が成り立つのは当然です。

補足説明1
 このとき注意して欲しい事は、又はの一方がただの定数の場合、例えばただの数を α あるいは β としたとき

としてはいけないことです。
 練習 問8の様に、n行正方行列 のときは

が正しい
 なぜなら、行列式の定数倍は、1.(3)2.で説明したように成分表示の一つの行あるいは一つの列に掛かるだけですが、行列の場合は、2.(1)3.で説明したようにすべての成分に掛かるからです。
 ここは勘違いしやすいところですので特に注意して下さい。

 

.練習    [目次へ]



 

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(2)特殊な行列

.転置行列、対称行列、交代行列


 転置行列を表す記号“t”を行列の右肩に付ける本も多いので注意されたし。

 

.対角行列、単位行列    [目次へ]



補足説明
 単位行列に関係して定義される特殊行列について補足しておきます。

 直交行列に関しては、2.(6)4.でもう少し説明します。
 


 要するにユニタリー行列とは直交行列を複素数に拡張したものです。

 要するにエルミート行列とは対称行列を複素数に拡張したものです。

 

.例    [目次へ]

 以下の例は重要です。

 上記の性質はAの列数がAの行数になり、Bの行数がtBの列数になることに注意すれば明らかです。

 ここは、別稿「曲面上の幾何学」3.(2)7.も参照されたし。

 

.練習    [目次へ]

 

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(3)逆行列

 本節は、別稿「余因子行列と逆行列の関係」3行3列行列の場合を参照しながら読まれると理解しやすいです。

.行列の除法と逆行列


 上記の2.(1)4.の定理1はこちら

 以下で用いる1.(5)1.Cramerの公式(10)はこちら

 上記の関係において は添字 に関して互いに転置の関係になっていることに注意されたし。
 他の列についても同様な手順を繰り返すと X=(xij の任意の列が求まる。

 以下は、1.(6)3.[例7]の証明を復習されたし。

 上で用いた1.(4)3.定理10の(7)式はこちら

 ここで、Aの逆行列-1と元の行列との積は交換可能である事に注意。
 以上をまとめると、次の定理2になる。

 このとき、行列Xの(i,j)成分を構成する“余因数”は、a(i,j)行列の転置行列の位置(j,i)成分の“余因数”になっていることに注意されたし。

補足説明1
 例えば、(3×3)行列

(i,j)成分の“余因数”(余因子)(j.i)成分(i,j)成分ではなくその転置の位置として並べた行列

行列A“余因数行列”(余因子行列)と言といいで表す。
 行列Aの(i,j)成分の余因数(余因子)とは行列Aからi行とj列の成分を除いた成分からできる小行列式に(−1)i+jを乗じたものです。
 だから定理2の(2)式の逆行列X=A-1

と表せます。
 このとき、2.(1)4.[補足説明]で説明した様に、

である事に注意して下さい。

補足説明2
 ここの定理2を用いると1.(6)3.[例7]が簡単に証明できる。

 このようにできるのは、定理2を導くとき[例7]で用いたテクニックを使っているからです。

 

.行列の除法と積の交換可能性    [目次へ]



補足説明
 定理2で示した様に、行列Aとその逆行列A-1の積は交換可能 A-1A=E=AA-1 です。しかし、上で注意した様に、二つ正方行列の積は一般にAB≠BAであって、交換可能ではありません。
 これは行列式の積|A|×|B|=|B|×|A|が常に交換可能であったのと大きく違います。
 行列式の積が交換可能なのは行列式の値はその行と列を入れ替えても等しい[1.(3).1.定理3]からです。しかし、その行と列を入れ替えた行列は全く異なった行列ですから、その積に関して交換可能ではないのは当然です。

 

.練習    [目次へ]


 以下の問14〜16重要です。


 

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(4)行列の階数と連立1次方程式

.一般の連立1次方程式


 

.行列の階数    [目次へ]





補足説明   (文献3.より)
 以下の議論で必要になるベクトルの“1次従属性”“1次独立性”、そして“一次結合”について説明します。最初に列ベクトルについて説明する。ここでは行列( )で囲って表していることに注意されたし。

 以下では k=m の場合を考える。
例 1

例 2

 以下は k=m≡n の場合
例 3


 以上は列ベクトルについて説明したが、行ベクトルについても全く同様にして“1次従属性”“1次独立性”、そして“一次結合”が定義される。

 

.rankの性質    [目次へ]



 一次結合の意味については前項[補足説明]を参照。








 

.例    [目次へ]

 次の例は重要です。



 

.練習    [目次へ]


 次の問は重要です。


 これは、要するに、ベクトルベクトルが張る平面内にベクトルが存在することを示している。

 

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(5)連立1次方程式

.rankと解の関係



 つぎに、連立1次方程式(3)が解をもつ場合、その具体的解法を考察する。
定理7


定理8






定理8系

上記の1.(6)2.定理14はこちら

補足説明
 定理12定理14定理8の系の間の関係は錯綜していますが、ある意味では2.(4)2.[補足説明]における一次従属性の定義とそこの[例2][例3]の説明でつくされていることです。

 

.解法の実際    [目次へ]




 

.例    [目次へ]

 以下の[例4][例5]重要です。







 

.練習    [目次へ]





 

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(6)線形写像と行列

.線形写像



 

.線形写像と行列    [目次へ]







 

.線形写像と連立1次方程式    [目次へ]



 

.直交変換と直交行列    [目次へ]




 

.例    [目次へ]


 

.練習    [目次へ]


 

HOME  目次  1.行列式)()()()()()()  2.行列)()()()()()(7)  3.文献

(7)章末問題






 

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3.参考文献

この稿は、下記文献1.の4章〜5章からの引用です。解りやすくなるようにかなり改変しています。

  1. 占部実、光藤富士男編「代数・幾何教科書」共立出版社(1964年刊)第4章、第5章
     私どもが大学1年の時に学んだ教科書です。下記リンクは元文章の一部を引用したものです。
     行列式の導入行列式行列式の性質余因数Cramerの公式行列式の積
     この教科書の練習問題は当時すべて解いてみたのですが、当時解いたノートはすでに無くなっています。今見なおしてみると、どうやって解いたか解らない問題が沢山あって四苦八苦しています。脳が確実に老化している。
  2. 別稿「余因子行列と逆行列の関係」も御覧下さい。
  3. 古屋茂著「新数学シリーズ5 行列と行列式」倍風館(1957年刊)
  4. 藤原松三郎著「岩波全書 行列及び行列式(改訂版)」岩波書店(1961年刊)
  5. 占部実、光藤富士男編「代数・幾何教科書」共立出版社(1964年刊)第6章を引用している
    別稿「座標変換と2次形式」も御覧下さい。
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