“一般相対性理論”を理解する上での最大の障壁は“微分幾何学”です。
やがて解りますが、微分幾何学に含まれるのが“リーマン幾何学”であり、そのリーマン幾何学に含まれるのが“テンソル解析学(絶対微分学)”です。
私は教職に就いて最初に定時制高校に勤務したのですが、そこで数学を教えなければならなくなりました。そのため数学の教員免許が必要となり、玉川大学の通信教育で数学の単位を取得しました。そのとき“微分幾何学”もレポートを出し試験を受けて単位認定してもらったのですが、今その通信教育テキストを取り出して眺めてみると、その内容をきちんと理解していなかったのは明白です。
そのため、玉川大学通信教育講座(数学→幾何学→第V・Y分冊)前田儀郎著「微分幾何学」(1969年刊)を復習して学び直すことにしました。このページはそのテキストからの引用です。解りやすくするために少し改変しています。正しく改変できていれば良いのですが。
微分幾何学はもともと、3次元ユークリッド空間のなめらか(微分可能)な曲線や曲面上の1点の近傍の性質を微分学を用いて論じるものでした。これはオイラー(L.Euler
1707〜1783年)やモンジュ(G.Monge 1746〜1818年)に始まり、最終的にガウス(C.F.Gauss 1777〜1855年)の曲面論に発展します。これが、アインシュタインが京都講演(1922年)で述べているものです。
リーマン(G.F.B.Riemann 1826〜1866年)は、この微分幾何学をさらに一般的な空間に拡張します。それは線素ds2のみに基づいて空間を定義し、しかも次元をより一般的なn次元にしたものです。この点において3次元ユークリッド空間内の曲面のみを考えたガウスを超えたものです。
リーマン幾何学はクリストッフェル(E. B. Christoffel 1829〜1900年)、リッチ( C. G.Ricci 1853〜1925年)らによって二次微分形式の不変式論として研究された。そして1901年にリッチとレビ・チヴィタが展開した絶対微分学(テンソル解析学)は、A.
アインシュタインによって一般相対性理論(1915年)に用いられて一躍注目を集めることとなった。ここも彼がグラスゴー講演(1933年)で述べているところです[3.(2)2.[補足説明3]参照]。
そのころ(1917年),レビ・チヴィタ(T. Levi‐Civita 1873〜1941年)は平行移動性の概念を導入し、1920年ころ E.
カルタンはそれを接続の概念に発展させたことにより、リーマン幾何学に幾何学的色彩が加わった。
ここでは3次元ユークリッド空間における曲線の性質をベクトル解析の方法で微分・積分学を利用して説明します。
最初にベクトル解析の復習を行い、空間曲線上の各点に随伴図形(フルネ標構)を考え、曲線論の重要な定理 『曲率、捩率が与えられた場合、運動を除いて空間曲線は決定する。』 を証明します。
(1)ベクトル解析
(2)曲線の方程式
(3)ベクトル関数の微分法
(4)ベクトル関数の積分法
(5)接線と法平面
(6)接触平面
(7)曲線の長さとフルネ標構
(8)曲率と捩率
(9)接触円と接触球
(10)合同変換
(11)自然方程式
(12)伸開線と縮閉線
(13)特殊曲線
(14)平面曲線
(15)チェザロの方法
3次元ユークリッド空間の2点A、Bをそれぞれ始点、終点とする有向線分ABに、平行移動によって重ね合わせることができる有向線分の全体を“ベクトル”といい
で表す。以下で現れる
も同様な定義で定められる。
二つのベクトル
に対して新しいベクトル
をxとyの和と定義し、x+yで表す(図1-1)。
ベクトルの和に対して次のことは明らかです。
2つのベクトルxに対して
を満たすようなベクトルxを
で表し、2つのベクトルの差という(図1-2)。
ベクトルb−a は a の終点から b の終点に向かうベクトルです。
このとき、ベクトルb からベクトルa を引くことは、ベクトルb に a と反対向きのベクトル(−a)を加えることと同じです。
ここで、−aはベクトルaと大きさは等しく向きが反対のベクトルを表すとしている。
任意の実数aとベクトルxに対して、xが零ベクトルでないとき、axをa>0ならば同じ方向にa倍、a<0ならば反対方向にa倍したベクトルで定義し、スカラーaとベクトルxとの積という。
これに対して次のことが成り立つのは明らかです。
3次元ユークリッド空間に原点O、座標軸をx1軸、x2軸、x3軸とする直交座標系を右手系にとる。座標軸上の単位ベクトルをe1、e2、e3とするとき、始点を原点O、終点をPとするベクトル
は
で表される(図1-3)。
単位ベクトルe1、e2、e3を“基本ベクトル”といい、組(x1,x2,x3)をxの成分という。始点を原点とするベクトルを“位置ベクトル”といい、その成分は終点Pの座標を表している。
成分が(y1,y2,y3)であるベクトルyとの和および差のベクトルの成分は
です。
2つのベクトルx,yに対して、実数
をxとyの“内積(スカラー積)”といい、x・yまたは(xy)で表す。また
を“ベクトルの長さ”といい、|x|で表す。ベクトルx/|x| は x と同じ向きを持つ単位ベクトルです。
内積について次のことは明らかです。
2つのベクトルx,yのなす角をθとするとき、
3辺の長さが|x|,|y|,|y−x|であるような三角形に余弦定理を適用すると
となるが、内積を用いて表せば
となる。これに(1-7)、(1-8)式を用いて整理すると
が得られる。特にθ=π/2、すなわち2つのベクトルが直交するときは
が言える。
[補足説明1]
内積(スカラー積)の定義を
ですることがある。
(1-6)式の定義との関係は基本ベクトルe1、e2、e3に対して
であることに注意し、x,yの成分を(x1,x2,x3)、(y1,y2,y3)として(1-8)式を用いて
となるから(1-6)式の定義が出てくる。
実際のところこちらの定義の方が解りやすい。別稿「ベクトルの内積と外積の成分表示」1も参照されたし。
内積の定義を用いれば平面の方程式が旨く表せる。ベクトルaの終点Aを通るベクトルnに垂直な平面πの方程式は、π上の任意の点Pを表すベクトルをxとすればベクトル(x−a)とnは垂直だから
で与えられる(図1-5)。
2つのベクトルx,yに対して、“外積(ベクトル積)”を成分
をもつベクトルで定義し、x×y または [xy] であらわす。
外積に対して次のことは明らかです。
外積 x×y は(1-12)式から行列式を用いて
で表すこともできる。さらに(1-6)式によって
であるから
となる。これを|x,y,z|と表すことにする。
行列式の性質[別ペーシ定理6]から
が成立する。特に[別ペーシ定理7]より
となるから、xおよびyとそれらの外積 x×y とは垂直であることが解る。
[補足説明1]
外積(ベクトル積)の定義を
ですることがある。ただし、xとyとのなす角をθとし、xとyに垂直な方向の右手系にとった単位ベクトルを e とする(図1-6)。
幾何学的には|x||y|sinθはx,yを2辺とする平行四辺形の面積を表すから、外積 x×yの大きさは上の面積に等しい。
(1-21)式から基本ベクトルe1、e2、e3に対して
となる。これを用いて(1-21)式の定義が内積の場合の[補足説明1]で行ったと同様の方法で求められる。
実際のところこちらの定義の方が解りやすい。別稿「ベクトルの内積と外積の成分表示」2も参照されたし。
3つのベクトルx,y,zに対して (x×y)×z を考える。(1-12)式より
となる。第2、第3成分についても同様な結果が得られるから
となる。さらに(1-17)、(1-18)式によって
が得られる。
特に、x=x’、y=y’の場合は
となる。これを“ラグランジュ(J.L.Lagrange)の恒等式”と言う。
また、(x×y)2≧0であるから、常に
が成り立つ。これを“コーシー・シュワルツの不等式”と言う。
この当たりについては、別稿「ベクトルの内積と外積の成分表示」2.(5)も参照されたし。
実数a,b,cとベクトルx,y,zに対して
なるベクトルwをx,y,zの“1次結合”という。
いま、
を満たす同時に0でない実数a,b,cが存在するとき、3つのベクトルx,y,zは“1次従属”であるといい、そうでないとき“1次独立”であるという。
x,y,zが1次従属であればすべて0でない実数、例えばcが存在するから
となり、zはxとyの1次結合で表される。
したがってx,y,zが1次従属であるための条件は
であるといえる。これは行列式の性質からも証明[別ページ例1]できる。
[例題1]
3つのベクトル
の終点A,B,Cが同一直線上にあるためには、実数a,b,cが存在して
が成立することです。
[解]
ベクトルb−a,c−aは同一直線上にあるから実数λが存在して
と書くことができる。移行して
となるから、a=λ−1,b=−λ,c=1とおけば、条件a+b+c=0を満たすことがわかる。いまCをAB上の任意の点と考え、
とおけば
と表せ、2点A,Bを通る径数をλとする直線の方程式が得られる。
[例題2]
空間の3つのベクトル
の終点A,B,Cの定める平面π上の任意の点を表すベクトルを
とすれば、径数λ、μに対して
なる関係がある。
[解]
3つのベクトルb−a,c−a,x−aは同一平面上にあるから1次従属です。したがって
と書ける。すなわち
また、(1-22)式により
です。
[問題1] (1-8)、(1-14)式を証明せよ。
[解]
両辺を成分表示で書き表してつきあわせて証明すればよい。
[問題2] ベクトル(2,3,1)と(2,-1,-1)の内積および外積を求めよ。また2つのベクトルのなす角を求めよ。
[解]
[問題3] ベクトルa,b,cを右手系をなす3つのベクトルとすれば、これを3つの稜とする平行六面体の体積Vは
で表されることを証明せよ。
[解]
[問題4] 次の関係式を証明せよ。
[解]
(1-18)式を利用すればよい。
空間曲線Cは1点Pの運動によって生じるものと考えられる。
1点Pの座標を(x1,x2,x3)とすれば、これらは時間 t の関数であって、Pを終点とする位置ベクトルx=x(t)は t に関係して変化する。そして、その成分(x1(t),x2(t),x3(t))も t の関数です。
一般に、スカラー t の値に対して、それぞれ1つのベクトル x(t) が対応するとき、x(t) を“ベクトル関数”という。逆に1つのベクトル関数が与えられると、その終点は1つの曲線を描く。このようにベクトル関数 x=x(t) は曲線の“径数表示”と考えることができる。
これから空間曲線をベクトル関数x(t)を用いて研究するのだが、x(t)の成分である3つの関数(ベクトル関数と区別して“スカラー関数”と呼ぶ)
は t の1価関数で、t で何回でも微分でき、t の巾級数への展開が可能であるとする。
これはこれから考えるベクトル関数x=x(t)が t の1価解析関数で、t で微分したベクトル
が零ベクトルとならないということです。
[例1] 直交座標系における、原点を中心とする半径aの円の方程式は
です。これを径数 t を用いて表せば
となる。
[例2] 2点A(a1,a2,a3),B(b1,b2,b3)を通る直線の方程式の径数表示は
となる。これは1.(1)[例題1]における直線の方程式を成分表示したものです。
[問題]
x3軸を軸とする半径aの直円柱に、与えられた角∠A=θを頂点にもつ直角三角形ABCを考え、頂点Aをx1軸上の座標(a,0,0)をもつ点A’に重ね、辺ACを直円柱とx1x2平面との交わりの円Cに沿ってまきつけるとき、斜辺ABの円柱上に描く曲線を“常螺旋”という。
この曲線上の1点P(x1,x2,x3)からx1x2平面に下した垂線の足をQとして、∠A’OQを径数 t とする常螺旋の方程式を求めよ。
[解]
x(t)を a≦t≦b で定義されたベクトル関数とする。変数 t と t+Δt に対応するベクトルx(t)とx(t+Δt)の差のベクトルを
とするとき、Δx(t)が
を満たせば、x(t)は t において“連続”であるという。区間内の任意の点で連続であるとき、ベクトル関数x(t) はこの区間で“連続”であるという。
いま連続なx(t)に対して、比Δx(t)/Δtを作れば、これも1つのベクトル関数で、Δt→0 のときの極限
が存在するとき、x(t)は t において“微分可能”であるという。その極限のことを
と書いて、t における“微分係数”という。いまx’(t)を t の関数とみなすときx’(t)を“ベクトル導関数”という。
[補足説明1]
ベクトル関数の微分を成分について表せば
となる。またベクトル導関数x’(t)の大きさ |x’(t)| は
となる。
ここで、aはスカラー関数a(t) です。さらにベクトル関数の高次導関数
なども同様に考えることができる。
[例] 大きさが一定で方向だけが変化するベクトル関数a(t) の導関数は球面上の曲線です。
a(t)は大きさが一定だから
を満たす。これを微分すると
従って a(t) と da(t)/dt は垂直です。
a(t)とa(t+Δt)とのなす角をΔθとして
とおけば
となる。
ここでa(t)方向の単位ベクトルを
とすると、
となる。すなわち、単位ベクトルa0(t)の導関数はa0(t)に垂直で、その大きさは回転角の角速度に等しい。
[問題1]
のとき、次のものを計算せよ。
[解]
[問題2] 次の関係式を証明せよ。
[証明]
(1-29)式と
より明らか。
[問題3] ベクトル関数A(t)の長さが一定ならば、A(t)とA’(t)とは垂直であって、逆も成り立つ。
[証明]
[問題4] ベクトル関数A(t)が定方向であるための条件は
です。
[証明]
ベクトル関数x(t)がベクトル関数y(t)の導関数であるとき、すなわち
のとき、y(t)をx(t)の“不定積分”といい、これを次のように表す。
c を任意の定ベクトルとするとき
となるから、x(t)の不定積分は無限に多くある。従ってx(t)は
と表せ、これもまたベクトル関数です。
[補足説明1]
ベクトル関数の不定積分を成分について表せば x(t)=(x1(t),x2(t)、x3(t)) として
となる。ここでc=(c1,c2,c3)とする。
x,yをベクトル関数、kを定数として
が成立する
x(t)を区間 a≦t≦b で定義された連続なベクトル関数とする。この区間を n 個の小区間に分割し、その各々の長さを Δt1,Δt2,・・・,Δtn とし、その各区間内の任意の点 t1,t2,・・・,tn に対して、和
を作る。そこで n を限りなく大きくしたときの Sn の極限値を
とかき、x(t)の a から b までの“定積分”という。
不定積分の公式に上限b,下限aをつけて同様な公式が成立するが、これ以外の特別なものをあげておく。
[問題1]
であるようなベクトル関数x=x(t)を求めよ。またこれはどんな曲線を表すか。
[解]
[問題2] a、bが平行でない2つの定ベクトルであるとき、次の関係を満たすベクトル関数x(t)を求めよ。
[解]
曲線C:x=x(t)上の2点 x(t) と x(t+h) に対して、x(t) を通る方向が
で与えられるベクトルを x(t) における“接線ベクトル”という。
接線ベクトルの向きは t が増加するとき、曲線上の対応する点の動く方向にその向きをもつ。従って“接線ベクトルの方程式”は λ を径数として
で与えられる。
曲線上の1点 x(t) を通り接線に垂直な平面を“法平面”という。
法平面上の1点をXとすれば、X−x(t) は接線ベクトル
に垂直であることから“法平面の方程式”は
で与えられる。
[定理]
曲線x(t) が“平面曲線”であるための必要十分条件は
です。
[証明]
《必要条件》
曲線x(t)が平面
上にあるときは、任意の t に対して
を満たす。
引き続いて t について3回微分すれば
が得られる。これからaを消去すると
となり、必要条件が得られる。
《十分条件》
[問題1] 1.(2)[問題]の“常螺旋”の接線方程式、法平面方程式を求めよ。
[解]
[問題2] 曲線x1=t,x2=t2、x3=t3の接線方程式、法平面方程式を求めよ。
[解]
[問題3] 曲線x1=acost,x2=asint,x3=f(t)が平面曲線となるように f(t) を定めよ。
[解]
曲線C上の点x(t)の近くの2点x(t+h),x(t+k)をとり、これら3点を通る平面の h と k を共に 0 に近づけたときの極限の平面を“接触平面”という。
上の3点を通る平面の方程式としては、1.(1)[例題2]によって、3つのベクトル関数X−x(t)、x(t+h)−x(t),x(t+k)−x(t)が一次従属であることを表せばよい。それは1.(1)9.(1-22)式により
を満たすことです。
ここで、“平均値の定理”を用いれば
であるから、これを代入し行列式の性質によって h と k をはずすと、
となる。第3行から第2行を引いて、もう一度平均値の定理を用いれば、
これを第3行に代入し(θ2k−θ1h)をはずすと
そこで、h,k→0 とすれば、“接触平面の方程式”として
が得られる。これは(1-16)式によって
曲線C上の点x(t)における接触平面と法平面との交わりの直線を“主法線”、x(t)を通り接触平面に垂直な直線を“従法線”という。
前項(1-46’)により
は従法線ベクトルであるからその“従法線の方程式”は
となる。
1.(5)1.で説明したように、ベクトルx(t)の t の導関数ベクトルは接線ベクトルであるから
は主法線ベクトルです。そのため“主法線ベクトルの方程式”は
となる。
接線と従法線の定める平面を“展直平面”という。この平面は主法線に垂直であるから、“展直平面の方程式”は
です。(1-18)式より
であるから(1-49)式は
とも書ける。
[問題1] 1.(2)[問題]の“常螺旋”の接触平面、展直平面、主法線、従法線の方程式を求めよ。
[解]
[問題2] 接触平面は与えられた曲線と3次の接触をすることを証明せよ。
[解]
曲線C:x=x(t)(a≦t≦b)上にn+1分点
をとって、これらの分点を順次結んでできる折れ線の長さは
です。
“平均値の定理”を用いると
であるから
ここで、nを限りなく大きくすれば、tk−tk-1 は 0 に収束する。したがって
の一様連続性(1.(3)1.参照)によって
すなわち、点x(a)からCに沿って点x(t)までの“弧長” s は
で与えられる。弧長 s は t の関数と考えられるから、t について微分して
となる。“ds” を曲線の“線素”という。x・x>0だから、s(t)は t の単調増加関数です。したがって t は逆に s の関数 t=t(s) とも考えられるから
となり、曲線C:x=x(t)は s の関数x=x(s)として表すことができる。
弧長 s についての微分を t についての微分「・」と区別して「’」で表せば
となる。故に
となるから、x’は単位ベクトルです。これを“単位接線ベクトル”といいξ1で表すことにする。すなわち
とする。
(1-54)式の両辺を s について微分すれば、
を得るから、x”≠0 ならば、x’とx”とは垂直です。
いま径数を s として接触平面の方程式は
と書けるから、x”の方向の直線X=x+λx”は接触平面上にある。したがってx”は“主法線ベクトル”です。
いま
とおき、ベクトル
を考えれば、ξ2はx”方向の単位ベクトルでこれを“単位主法線ベクトル”という。
ξ1とξ2の外積をξ3と置いて“単位従法線ベクトル”という。すなわち
とする。
接線ベクトルξ1は曲線の向き(すなわち s の増加の側に向く)に従って定まるが、x”は2次の微分商であるから曲線の向きに関係せず定まる。(1-58)式から3つのベクトルξ1,ξ2,ξ3は右手系をなし、x(s)を原点としてこれらを各軸上の単位ベクトルとする直交座標系が曲線上に定まる。
このように曲線上に3つのベクトルでつくられる図形をx(s) における曲線の“フルネ標構”といい、x(s)ξ1ξ2ξ3で表す。フルネ標構は s の値とともに動くので動標構と呼ばれ、x(s) の近傍における曲線の性質を調べるのによく用いられる。
(1-57)式から
また、ξ3・ξ3=1 を s について微分して
次に、(1-58)式を微分すると(1-29)式と(1-59)式によって
したがってξ3’とξ1、ξ3’とξ3とは垂直であるから、スカラー w が存在して
と書ける。
次にξ2・ξ2=1 を微分すると
したがってξ2’は展直平面上にあるから、ξ1とξ3の1次結合
で表すことができる。そこでξ1・ξ2=0 を微分して
であることに注意して、上式においてξ1との内積をとればξ3・ξ1=0であるから
同様に、ξ2’・ξ3=−ξ2・ξ3’に注意して、ξ3との内積をとればξ1・ξ3=0であるから
となって λ=−k と μ=w が得られる。
以上をまとめて表せば
となる。これを“フルネ・セレー(Frenet-Serret)の公式”といい、曲線論では重要な公式で、空間曲線の微分幾何学的な性質はすべてこの公式から導ける。
ここで現れる k=k(s),w=w(s) を x(s) における曲線Cの“曲率”、“捩率”と言う。次節でその性質を調べる。
フルネの公式の応用として、C上の点x(0)=x0の近傍の曲線の形状を調べてみる。
x(s)を s=0 の適当な近傍で巾級数に展開すると
“フルネ・セレーの公式”(1-60)式から
であるから、ξ1(0)=ξ10,ξ2(0)=ξ20,ξ3(0)=ξ30 と書けば(1-61)式は
と表すことができる。ここでk0,w0,k0’,w0’等はk,w,k’,w’等の s=0 における値を表す。(1-62)式は s=0 の付近の曲線の形を与えるもので“ブーケ(J.C.Bouquet)の公式”と言われる。
まず、y1とy2との関係は、s=0 の近傍では近似的に
となっているから接触平面への曲線の正射影は図1-18のようになっている。
次に、y1とy3との関係は、s=0 の近傍で、近似的に
となるから、展直平面への曲線の正射影はw0の正負に従って図1-19、図1-20のようになる。
さらに、y2とy3の関係はk0≠0のとき近似的に
となるから、法平面への曲線の正射影は図1-21のようになる。
[問題1] 1.(2)[問題]の“常螺旋”の弧長を求め、その方程式を s を径数として表せ。
[解]
[問題2] 接触平面の方程式(1-46)が(1-55)式となることを証明せよ。
[解]
[問題3] “常螺旋”について、ξ1,ξ2,ξ3を求めよ。
[解] [問題1]の結論より
[問題4]
[解]
1.(7)2.で定義した“曲率”k(s)の幾何学的意味について考える。曲線x(s)のsにおける単位接線ベクトルξ1(s)とs+Δsにおけるξ1(s+Δs)のそれぞれの始点を原点Oに移すと、その終点はξ1(s)の変化に従って単位球面上に曲線Γを描く。これをCの接線による“球面表示”という。
したがって、Γの方程式は
であたえられ、s=0 に対応するΓ上の点ξ1(0)から測ったΓの弧長を σ とすれば“フルネ・セレーの公式”(1-60)(2)式によって
k≧0 であるから、sが増加するとき、σも増加するようにとっておけば、
で与えられる。いまξ1(s)とξ1(s+Δs)とのなす角をΔθとすれば(図1-22)、Δσ=σ(s+Δs)−σ(s)とおけば
が成り立つ。すなわち“曲率”kは幾何学的には曲線の曲がり方の大小の度合いを表すことを示している。そして空間曲線の場合にはその定義からk(s)は負にならない。
曲率の逆数
をx(s)におけるCの“曲率半径”という。
次に、1.(7)3.で定義した“捩率”w(s)の幾何学的に意味について考える。弧長 s の変換に対する従法線ベクトルξ3(s)の変化の状態は、ξ3(s)を法線とする接触平面の変化の状態でもある。いまξ3(s)による曲線Cの球面表示を考え、その“球面表示”の曲線をΓ1とすれば、その方程式は
で与えられ、s=0 に対応するξ3(0)から測った弧長を r とすれば“フルネ・セレーの公式”(1-60)(4)式により
よって、従法線ベクトルξ3(s)の弧長sの変化に対する変化率は
で与えられる。いまξ3(s)とξ3(s+Δs)のなす角をΔφとすれば、Δτ=τ(s+Δs)−τ(s)と置くと
が成り立つ。次に w を表す公式を求める。まず(1-60)(3)式の求め方からと(1-58)式、(1-16)式とから
行列式の性質によって
が得られる。1.(5)2.[定理]と(1-69)式とから次の定理が得られる。
[定理]
曲線Cが“平面曲線”であるための条件は捩率 w が0であることです。
曲率kとちがって捩率wは正の場合と負の場合がある。接触平面に対して、従法線の向きを正の側、反対側の向きを負の側とすればw(s)>0ならば曲線は接触平面の負の側から正の側へ通過し(図1-20)、w(s)<0ならば曲線は正の側から負の側へ通過する(図1-24)。
w(s)>0の場合(図1-23)をCはx(s)で“右巻き”と言い、w(s)<0の場合(図1-24)をCはx(s)で“左巻き”と言う。
[問題1] “常螺旋”の曲率および捩率を求めよ。
[解]
1.(7)[問題3]により、常螺旋のξ1,ξ2,ξ3は
であるから、1.(7)2.(1-56)式と1(7)3.(1-60)(3)式により
となる。
[問題2] 空間曲線が任意の径数 t で表されるとき、曲率および捩率は
で与えられることを示せ。
[解] 1.(7)1.および1.(7)2.で得られた関係式を用いて
1.(7)[問題2]と同様にして
[問題3] 空間曲線C上のすべての点で曲率k(s)=0 ならば C は直線であることを示せ。
[解]
[問題4] 以下の曲線ベクトルの曲率と捩率を求めよ。
[解]
曲線C:x=x(s)上の3点x(s),x(s+h1),x(s+h2) を通る半径r,中心 a の円は
で与えられる。ここでh1,h2をともに0に近づけたときの極限の円を考える。
とおけば、3点x(s),x(s+h1),x(s+h2) は円周上にあるから、
が成り立つ。“ロル(M.Rolle)の定理”により
さらにもう一度“ロル(M.Rolle)の定理”を用いて、
が得られる。ここでs1,s2,s3の不等関係に注意すれば、h1,h2→0に対して
が成り立つから、これらにフルネ・セレーの公式(1-60)式を用いて
となる。
一方、曲線C上の非常に近い3点で決まる平面は接触平面であるから、中心aは接触平面上にあることが解る。したがって
と表すことができる。
この両辺に−ξ1の内積を取った式と(1-70)式を比較するとλ=0が得られるから
となる。この両辺に−ξ2の内積を取った式と(1-71)式を比較してただちに
が得られる。したがって、曲線C上の3点を通る円の極限は接触平面上にあって、その中心は
で与えられ、半径はρ(s)です。この円をx(s)における“曲率円”、又は“接触円”といい、その中心を“曲率中心”、または“接触円の中心”という。
[補足説明]
f(x)が(a,b)で連続かつ微分可能で、しかもf(a)=f(b)=0 ならばf’(ξ)=0 を満たすような ξ が a<ξ<b に存在する。
これを “ロル(M.Rolle)の定理” と言う。
曲線C上の4点を通る球面の極限の球面(これを“接触球面”という)も前項と同様な計算によって得られる。
曲線C:x=x(s)上の近くの3点をx(s+h),x(s+h1),x(s+h2) とし、これらの4点x(s),x(s+h),x(s+h1),x(s+h2) を通る球面の中心を as 、半径をrとするとき、その球面の方程式は
です。
と置くと
この関係式に対して、前項と同様なやり方で“ロル(M.Rolle)の定理”を繰り返し適用すると、h,h1,h2→0のとき、この球面の中心の極限の点 as、極限の半径 r に対して
でなければならないことが証明できる。この式に対してフルネ・セレーの公式(1-60)式を用いると
であるから
となる。すなわち、球の中心 as は
で与えられ、半径 r は
で与えられる。この球面を“接触球面”という。
ここで曲率円と接触球面とを考えてみる。x(s)における接触球面を接触平面で切った切り口の円は曲率円であるが、この中心は前項の(1-72)式から
であった。この式と(1-73)式を比較したら解るように、接触球面の中心はx(s)における曲率円の中心 a から接触平面に立てた垂線上ρ’/wの距離にある。この垂線を“曲率軸”という。
いま曲線Cが1つの球面上にあるとき、その曲線を“球面曲線”という。球面曲線上の任意の s に対して、“接触球面の中心” as 、およびその半径 r は一定でなければ成らないからas’=0です。すなわち(1-73)式とフルネ・セレーの公式(1-60)式の(1)(3)(4)より
であるから
となる。
逆に曲線Cが(1-75)式を満たせば、(1-74)式をsについて微分して得られる式
が常に0となるから、 r’=0 となり r も一定となるから曲線Cは球面曲線です。
このことから次の定理が得られる。
[定理]
空間曲線が“球面曲線”であるための必要十分条件は
が成り立つことです。
[例題] 曲率が一定である曲線の曲率中心の軌跡は、また曲率が一定な曲線であることを示せ。
[解] 曲線x(s)の曲率k(s)=一定とする。その曲率中心の軌跡は(1-72)式により
で与えられる。
したがって
さらに両辺を s で微分し、フルネ・セレーの公式(1-60)を用いると
[問題1] 空間3次曲線
について次のものを求めよ。
(1)曲率、捩率 (2)ξ1,ξ2,ξ3 (3)接触球中心の座標
[解]
だから曲率、捩率は
となる。またフルネ標構は
となる。接触球中心の座標a=(a1,a2,a3)は
と、前述の値を
に代入すれば得られる。
[問題2] “常螺旋”の曲率円の中心の軌跡はまた常螺旋で、
であることを示せ。
[解] 1.(7)[問題3]により、常螺旋のξ1,ξ2,ξ3は
となるが、これは常螺旋の方程式を表す。ここで1.(8)[問題1]で求めた常螺旋の曲率、捩率の表現を用いて計算すると
となる。
そのとき座標系Ox1x2x3に関して
なる関係があれば、この変換を“合同変換”という。
いま
と置き、Aの“転置行列”を
で表せば、行列の積の性質を用いて(1-76)、(1-77)式は(行列式の導入、行列式、行列式の性質 )
と表すことができる。そして合同変換によってベクトルの大きさ、角、内積、一次独立等の性質は保存される([問題1]参照)。
一般に(1-79)式を満たす行列を“直交行列”という。|A|=|At|、|E|=1 であるから
で |A|=1 なる直交行列によって表される合同変換を“運動”、|A|=−1 に対応するものを“折り返し運動”という。そこで、この合同変換によって空間曲線、およびその曲率k、捩率w等がどの様に変わるかを調べる。
であるから、線素の間に
これを s について微分すれば
よって次の定理が得られる。
[定理]
[問題1] 合同変換によってベクトルの長さ、2つのベクトルのなす角は不変であることを解析的に証明せよ。
[解]
[問題2] 合同変換によって1点から出る3つのヘクトルを稜とする平行6面体の体積が不変である事を解析的に証明せよ。
[解] [問題1]の結論を用いれば明らか。
[問題3] 変換
が合同変換であることを証明せよ。
[解] 以下の関係が成り立つので明らか。
1.(10)2.[定理]において|A|=1、すなわち合同変換が“運動”の場合には、曲線Cの移動に関係せず対応点での曲率と捩率は相等しい。また|A|=−1、すなわち“折り返し運動”の場合には対応点での曲率は等しく、捩率だけが符号が反対になる。以上のことから曲線Cの曲率k、捩率wはCの合同変換によって得られるすべての曲線族について共通な量とみなすことができる。
このことを逆に考えてみると、運動を除いて曲線を決定するものは曲率と捩率とであるか、すなわち s の関数としてk(s)、w(s)が与えられたとき、運動を除いて、k(s)、w(s)を曲率、捩率とする曲線がが決定されるか、という問題が起こってくる。この問題を解決するのに次の常微分方程式論からの定理を利用する。
[定理1] Pij(t)(i,j=1,2,3,・・・・・,n)を a≦t≦b で定義された t の連続関数、y1,y2,y3,・・・・,ynを未知関数とするとき、連立微分方程式
は与えられた初期条件yi(a)を満たす解がただ1組存在する。
[証明]は適当な常微分方程式論の書籍を参照して下さい。
[定理2]
[証明]
次に、s の関数 k(s)≧0,w(s) が与えられたとき、これらを曲率、捩率とする曲線が存在するかという問題に対して次の定理がある。
[定理3] k’(s)が連続である関数k(s)(≧0)と連続な関数w(s)が 0≦s≦L において任意に与えられたとき、これらをそれぞれ曲率と捩率にもつ空間曲線が存在する。
[証明]
この定理によって、空間曲線の微分幾何学的な性質がすべて曲率k(s)、捩率w(s)から定まり
曲線の方程式とみることができる。したがって(1-87)式を空間曲線の“自然方程式”と呼んでいる。
[例題] 空間曲線の自然方程式が
である曲線を求めよ。
[解] 1.(8)[問題1]の結論より求める曲線は“常螺旋”であることが予想されるが、実際にそうなることを証明する。
求める曲線のフルネ標構に対して、a2+b2=c2とおけば
が成り立つ。第3式ξ2’を微分し、再び上の関係を用いれば
が得られる。この微分方程式の解はα、βを定ベクトルとして
と書ける。ξ2はα、βの1次結合で表されているからα、βの定める平面上にある。いま、この平面に垂直な方向をx3にとれば、ξ2のx3成分は0です。またξ2は単位ベクトルであるから
ここで、|α|=|β|=1とおけば、α、βは互いに垂直な単位ベクトルで、これをx1軸、x2軸にとれば
と表せる。またξ1は単位ベクトルであるから、任意のsについて
でなければならないから
として曲線の方程式が得られる。
[問題] 空間曲線の自然方程式が
である曲線を求めよ。
[解]
このこの微分方程式の解はa、bを定ベクトルとして
となる。ここで、ξ2は定ベクトルa,bの定める平面上にあるので、a×bの方向をx3の方向に取れば、ξ2=(ξ21,ξ22,ξ23)においてξ23=0となる。またξ2は単位ベクトルであるから
これが任意のsについて成立するためには
であればよい。すなわちa,bは互いに垂直な単位ベクトルで、その方向をx1軸、x2軸に取れば
となる。さらにξ1=(ξ11,ξ12,ξ13)にたいしては、
となるが、ξ1・ξ1=1から
であるので
となる。
を得る。
空間曲線C:x(s)に対して、なんらかの方法によってCの各点x(s)に同種の図形を配置したとき、この図形の集まりをCの“共変図形(随伴図形)”と言う。いままで考えてきた、各点x(s)に配置したフルネ標構、曲率円、接触球面などの集合はすべて共変図形の一種です。
特にその図形が点であるとき共変図形はCに対して1つの軌跡を描く。1.(9)2.で考えた接触球の中心が s の変化とともに描く曲線Γ:y=y(s)
などもその例ですが、このような曲線になる共変図形(随伴図形)を特にCの“随伴曲線”という。以下で説明する伸開線や縮閉線も随伴曲線の一種です。
いまその方程式を求めてみよう。y(s)はCの接線上にあるから
とおくことができる。仮定からy’(s)はξ1に垂直であるから
したがって、“伸開線の方程式”は、
です。ここに c は任意の定数であるから c のいろいろな値に対して曲線Cの伸開線は無数に存在する。
実際にはC上の1点x(s)での接線上に、x(s)からx(c)までの弧の長さ(c−s)を取ってx(s)に対応させた点が随伴曲線(伸開線):y(s)です。
と書ける。“法平面”とは単位接線ベクトルξ1に垂直な平面で、単位主法線ベクトルξ2と単位従法線ベクトルξ3とはその平面上にある。
2点y(s)とx(s)を通る直線は、y(s)の接線であるから
を満たすようなスカラー関数λ(s)が存在する。(1-89)式を微分し、フルネ・セレーの公式(1-60)式を用いて
(1-90)式と比較して
が成り立つ。第1項より
第2項と第3項とより
です。
この方程式は縮閉線y(s)が元の曲線x(s)における曲率軸上にあり、曲線x(s)の曲率半径(接触平面)ベクトルと(y(s)−x(s))ベクトルが成す角度が
であることを意味する。曲率軸については1.(9)2.の図1-25を復習されたし。
[例題]
[解]
[問題1]
[解]
[問題2] “常螺旋”の伸開線は平面曲線で、これを含む直円柱の直截口(チョクサイコウ)の伸開線であることを証明せよ。“直截口”とは曲面上の任意の点での法線ベクトルと接線ベクトルで構成される平面で曲面を切ったときの切り口曲線の事です。
[解] 常螺旋の方程式と単位接線ベクトルξ1は1.(7)[問題1]、[問題3]の結論から
だから、これを伸開線の方程式 y=x+(l−s)ξ1 に代入すると
[問題3]
[解]
ここで(1-51)式より
だから
次に
であるから
が得られる。
接線が与えられた定方向a と定角θ をなすような曲線を“定傾曲線”という。 a を単位ベクトル、曲線をx=x(s)とすれば
だから、s について微分すると
となり、k=0 ならば直線でやはり定傾曲線で、k≠0 ならば
となり、定傾曲線の主法線ξ2は定方向a と直交する。したがってξ1,ξ3,aは同一平面上にあるから
と表せて、a・ξ1=λ=cosθ,a2=λ2+μ2であることに注意して
を得る。(1-99)式を s で微分すれば
となる。この事から次の定理を得る。
[定理1] 曲線が“定傾曲線”であるための必要十分条件は、曲率kと捩率wの比が一定であることです。
と表せるから、s で微分し、フルネ・セレーの公式を用いて
となる。
と表せる。
と表すことができるから、(1-101)式と比較して
を得る。
において、ξ1とξ3の係数は 0 でなければならないから
となる。
いまθ=0 ならば(1-103)(2)式から w=0 となり、1.(8)2.[定理]により、曲線は“平面曲線”になる。
θ=π/2 のときは(1-103)(1)式k=1/uと u は定数であることから k=一定 となり“定曲率曲線”となる。
となるから、usinθ≡a,ucosθ≡bを定数として曲率kと捩率wの間には
なる関係がある。以上をまとめて次の定理が得られる。
[定理2] 空間曲線が“ベルトラン曲線”であるための必要十分条件は、曲率kと捩率wの間に(1-105)式なる関係があることです。
1.(8)[問題1]により“常螺旋”は曲率も捩率も定数であることが証明されているので、この節の[定理1]、[定理2]により、常螺旋は定傾曲線であると同時にベルトラン曲線であることが解る。
[問題1] 曲線x1=3t,x2=3t2,x3=2t3 は“定傾曲線”であることを証明せよ。
[解] 曲線x1=3t,x2=3t2,x3=2t3 より
となるので、1.(8)[問題2]の結論を用いると
となる。k=wなので[定理1]より定傾曲線となる。
[問題2]
[解] 1.(12)[例題]あるいは[問題3]と同様にして曲率と捩率を求めると
となる。
ここで
と置くと
となるので[定理2]によりベルトラン曲線となる。
[問題3]
このような曲線Cを“マンハイム(A.Mannheim)曲線”という。
[解]
平面曲線論は空間曲線論の特別な場合として論じられるが、この説では特にこれだけを取り上げて扱うことにする。
平面上に原点O、右手系にとった直交デカルト座標系O,x1,x2の1点Pを位置ベクトル x=(x1,x2) で表す。平面曲線Cは弧長 s によって
で与えられ、その“単位接線ベクトル”ξ1は、
です。そこで ξ1 を+π/2回転したベクトルを ξ2(s) と置けば、その成分は
で、(1-107)式から
となる。したがって ξ2 はC上の点x(s)における“単位法線ベクトル”です。これら2つのベクトル ξ1、ξ2 で定まる標構を、曲線Cの“フルネ標構”という。
次に(1-107)式と(1-109)式をsで微分したした式から
となるので、ξ1とξ1’は垂直です。故にスカラー関数k=k(s)が存在して
とあらわせる。ここでk=k(s)を“曲率”という。次に、(1-110)式を用いて
と表すことができる。
(1-110)式と(1-111)式からCのフルネ標構x(s)ξ1,ξ2,ξ3に対して
が成り立つ。これを平面曲線の“フルネ・セレー(Frenet-Serret)の公式”という。
[補足説明1]
曲率kの幾何学的意味を考える。x1軸とξ1とのなす角をθとすれぱ
で与えられる。したがって、平面曲線のフルネ・セレーの公式から
となる。故に空間曲線の場合と同様に、曲率kは接線方向の弧長sの変化に対する接線の方向角度の変化率を表す。いま、曲率を s の関数としてk=k(s)で与えたとき、(1-114)式によって
によりθが求まるから(1-113)式に代入して曲線Cの方程式が
によって得られる。ここにベクトルc=(c1,c2)は s=0 に対応する点x(0)を表し、θ0 は点x(c) における接線がx1軸となす角を表す。
このようにk(s)は曲線Cを運動を除いて決定するので、k=k(s)を平面曲線の“自然方程式”という。
[例題] 自然方程式が
である平面曲線は“懸垂線”であることを示せ。
[解]
ここで、tanの加法定理を用いると
となるので
が得られる。これは“懸垂線”の方程式です。
ちなみに、懸垂線とは線密度が一定の鎖の両端を摘んで重力場中に垂らしたときに鎖が形作る曲線の事で、この名称はホイヘンスに由来(1691年)する。
[問題] 自然方程式がR2=2asである平面曲線は円の伸開線であることを示せ。ただしRは求めるべき平面曲線のx=x(s)における曲率半径です。
[解] 問題の曲線の接線とx1軸とのなす角をθとすれば(1-115)式より
となる。
曲線の方程式は、ds=aθdθだから(1-116)式より
となる。
となる。これが随伴曲線が定点であるとき u1,u2 の満たすべき条件で、“チェザロ(E.Cesaro)の不動条件”という。
所で、(1-117)式からと s についての微分によって
を得る。
[例題]
[解]
で与えられる。よって(1-118)式は
さらに
を得る。
[問題] “サイクロイド”の自然方程式を求めよ。
[解] サイクロイドとは、底曲線が直線で、しかも転曲線が円で固定点が円周上に在る場合であるから底曲線の曲率k=0であり、c=bとなる。
故に(1-124)式から
さらにだ(1-126)式より
となる。これらから“自然方程式”
を得る。
この稿を作るに当たって、下記文献を参考にしました。感謝!