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高校物理で自由端や固定端での反射は次のように習う。端の境界条件として自由端で変位は完全なフリー、固定端で変位はゼロが成り立つので、反射波の位相は前者でそのまま、後者でπずれる。
しかし完全な固定端や自由端ではなく二種類の媒質が一つの境界で接しており、その境界で反射が生ずる場合、位相の関係がどのようになるのかイメージしずらく、なかなか理解しがたい。その当たりを説明します。
媒質1、2の境界において以下の境界条件が成り立つ。
媒質1、2での媒質の振動周期をT(境界条件1よりTは媒質1、2で等しい)、媒質1での波長をλ1、媒質2での波長をλ2とすると、入射波、反射波、透過波を以下のように仮定できる。
境界(x=0)で変位が連続の条件より
f0(t、x)+fr(t、x)=ft(t、x)
でx=0を代入して
A0sin2π(t/T)+Arsin2π(t/T)=Atsin2π(t/T)
A0+Ar=At・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
境界で変位の傾きが連続より
(2π/λ1){− A0cos2π(t/T)+Arcos2π(t/T)}=−(2π/λ2)Atcos2π(t/T)
となり次式が得られる。
λ2A0−λ2Ar=λ1At・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
(4)、(5)式をAr、Atの連立方程式と見なして解くと
となる。
ここで媒質1の絶対屈折率=n01、波の速度=v1、波長=λ1として、媒質2の絶対屈折率=n02、波の速度=v2、波長=λ2とすると、高校物理で習うように
が成り立つので(6)式は
となる。
ここで屈折率が 【小さな媒質1】 から 【大きな媒質2】 へ入射する場合 (n01−n02)<0 となるので Ar<0 となる。これが反射波の位相がπ変化することに対応する。
λ1=6、A0=5 とすると λ2=6×1÷1.5=4 、 Ar=5×(1−1.5)÷(1+1.5)=−1 および At=5×2×1÷(1+1.5)=4 となり
波の動きを理解するには、別稿「動的潮汐理論におけるケルビン波」4.(2)2.のアニメーション動画をご覧ください。
また以下のURLに類似のアニメーションがあります。
http://www-antenna.ee.titech.ac.jp/~hira/hobby/edu/em/fresnel/inc0deg/LiveGraphics3D/diamond.html
ただし、このアニメーションは電磁波の場合のアニメーションなので電場Eの成分(赤色)のみに注目して下さい。
λ1=6、A0=5 とすると λ2=6×1.5÷1=9 、 Ar=5×(1.5−1)÷(1.5+1)=1 および At=5×2×1.5÷(1.5+1)=6 となり
この場合(6)、(7)から明らかなように媒質2での透過波の振幅が入射波よりも大きくなる。一見不思議に思えるが、屈折率の小さい媒質というのは一般に密度が小さく、バネ定数k(3次元の連続媒質ではヤング率という)が大きくなるので、実際の現象を考えたらうなずける。密度が小さいので振幅が大きくても透過する波のエネルギーが大きくなるわけではない。
別稿「音速の理論」や「波動方程式と一般解」3.(3)で述べた様に、バネ定数kが大きく、媒質の密度が小さいと波の伝播速度は速くなる。屈折の理論から明らかなように、速度が大きくなると屈折率が小さくなる。