クリフォード・M・ウィル著(松田卓也、二間瀬敏史訳)「アインシュタインは正しかったか?」TBSブリタニカ(1986年刊)p49〜72より引用。
第 2章 曲がった時空にいたる真っすぐな道程
第 3章 光の重力赤方偏移と時計
第 4章 光の曲がり
第 5章 水星の近日点移動(前半部のみ)
第 6章 光の時間の遅れ
第10章 連星パルサー重力波は存在した
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051_052 下記の“パウンドとレブカの実験”については別稿ゼックスル文献§2-1もご覧下さい。
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左図では、解りやすくする為にロケットの長さを塔の高さに比較して短めに改変していますが、ロケットの速度は光速に比較して小さいので、ロケットの観測窓の長さは塔の高さ程度は必要です(元の図はそうなっている)。いずれにしてもロケットの速度は光速度に比較して小さいので、ここでは非相対論的なドップラー効果の公式で良いことに注意。ドップラー効果の公式は(説明1、説明2、説明3)を参照。厳密な事を言えば、以下の計算は特殊相対性理論に従った正確なドップラー公式を用いた方が良いが、ここの近似計算レベルでは古典的なドップラー公式で十分です。
上記の“青方偏移”についてはハートル文献§6.3の説明も参照されたし。ただし、ハートル文献のτAとここのν1、及びτBとν2は互いに逆数の関係になっていることに注意されて下さい。
[補足説明]
上図は“青方偏移”の説明でしたが、地上から塔上の受信機へ光束を発射した場合に生じる“赤方偏移”も同様な思考実験で導ける。
このとき、塔の底にいる実験者は発信器から発射された光束の振動数はあくまでν1であると思っているし、実際彼の持つ観測装置はその様に計測する。ところが塔頂上の観測装置は振動数ν2の光束として受け取る。
もちろんこれは、本文に説明されている通り、下図の様に考えても良い。この場合もロケットの自由落下速度は光速よりも遙かに遅いので、実際にはロケット観測窓の長さは塔の高さより少し長ければよい。このとき、古典的ドップラー公式を用いると式が前記と異なってしまいますが、相対論的なドップラー公式を用いれば式の違いは無くなります。
実際、Einsteinは1911年プラハ論文で、このような思考実験に等価原理を適用して赤方偏移や、エネルギーが重力を生む事を論じた。
彼は1907年論文ではもっと巧妙な方法を用いている。
上記2番目の図の状況に付いての別説明(江沢洋著「相対性理論」裳華房(2008年刊)のp251章末問題[4]より)。
最後の文節は誤解を招きやすいが、要するに上の時計の方が゛下の時計より早く進むと言うことです。また、文中の前問の主張はこちらのことです。
光を逆に送る場合の計算はハートル文献§6.3にあります。
[補足説明]
上記説明文中の赤・青波線の部分の意味は解りにくいが、別稿「一般相対性理論の古典的検証と時空の歪み」3-3の図19のa)とb)の場合を時間次元について説明しているのだと思って下さい。
文中の“時計による”とはa)に相当して重力場中で時計がゆっくり進みAB間に時計カウント数が少ししか入らない状況を意味しており、文中の“信号による”はb)に相当して時計の進みは同じだがαβ間の時間次元が縮んでいると考える事を意味します。
文中の説明の様に、時計を重力場中で移動させて時計の進み具合の違いを調べようとしても、すべての時計の進み具合が同じように変わるから時計の進み具合の絶対的な伸び縮みを確かめることはできません。それはちょうど、物指し棒を重力場中を移動させてその伸び縮みの様子を確かめる事はできないのと同じです。
ここで、a)において“単位時間の長さ”は、“単位物指し棒の長さ”とは逆に、縮むのではなくて伸びる、またb)おいて“時間次元”は、“空間次元”とは逆に、伸びるのどはなくて縮むこと注意して下さい。これが基本計量テンソル成分の時間次元部分と空間次元部分の符号が逆転する理由だと思います。
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065_066 上記の実験の具体的な計算は別稿§3-2の説明とそこの[補足説明1]を参照されたし。
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069_070 下記文中の飛行中の時計が発する振動数と地上の追跡基地が受け取る振動数の関係は解りにくいので、別稿ゼックスル文献§3-1を参照されたし。ただし、そこのAとBの立場を逆に考える必要があります。そうするとドップラー効果も含まれてきますが、それは下記の操作で相殺できる。
上記の事柄についてははハートル文献§10.1も参照されたし。
[補足説明]−高校物理から−
今は、非相対論的なドップラー公式で良いので、上記の結論は高校物理で習うドップラー効果の公式(説明1、説明2、説明3)から導ける。
下図の様に振動数νの音源に速度vで近づいている壁によって反射された音の振動数ν’は次のようにして求まる。反射壁の所にいる観測者Bが音源に対して近づきながら音源の音を聞くと振動数ν”の音として聞こえる。次に、観測者Bが新たな音源となってそれと同じ振動数ν”の音を出しながら観測者Aに近づくと考えて、観測者Aの聞く音の振動数ν’を求める。
ここで音速をc、反射壁の速度をvとすると
以上の音速cを光速(電波)と見なせば良い。
v≪cの場合には、上式はさらに
となる。いずれにしてもドップラー偏移は2倍となる。