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第4章 はやきこと光の如し

 太田浩一著「マクスウェルの渦アインシュタインの時計(現代物理学の源流)」東京大学出版会(2005年刊)第4章“はやきこと光の如し”より引用しています。ただし、少し改変しているところがあります。
 また、『参考文献』は別稿で引用していますので別ウインドウで開いて、適宜参照されて下さい。










補足説明1
 4.1節の内容は、現在の高校生は習わない所なので何を言っているのか解りにくいところです。ここは、今日の高校や大学で習う電流の相互作用の事を議論しています。
 つまり、今日では、別稿の4.補足で述べた様に
『・・・・・ 電磁気学では近接作用の基になる場の考え方が重要になる。そのときそれらの場とその源の電荷・電流との関係を、特別な場合で十分に吟味しておくと良い。その特別な場合とは[点電荷]・[無限線状電荷分布]・[無限平板状電荷分布]・[球殻状電荷分布]の周りの電場と、[直線状電流]・[平板状電流]・[円筒状電流]・[サーキット状円電流]・[ソレノイド電流]の周りの磁場である。
 工学的に重要な多くの例はこれらのどれかで近似できるので、これらの性質を確認・整理しておくと一般的な電磁場の性質の理解に役立つ。・・・・・』
 の様な方針で教えられることです。
 しかし、電磁気学発展の初期には、電流間の相互作用ではなく、単独の電荷が互いにある距離離れて相互に移動し合う場合の電荷同士の間に働く力の法則として議論された。そこの所を注意して読まれると、ここの内容が良く理解できると思います。
 また、そのとき相互に働く力の法則の比例定数として光速度が出てくるのですが、この光速度こそが、相互に働く作用の伝播速度であり、電磁気学の本質にかかわる定数だった。
 文中の《ヴェ-バーとコールラウシュの実験》に付いては別稿「電磁気学の単位系が難しい理由」4.(1)3.をご覧下さい。 

 

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 以下で説明されるLorez論文[516]はこちらで引用していますので、別ページで参照しながら以下をお読み下さい。





109-02


110-02

 上記式変形を解りやすく説明したものが別稿別稿「線形振動子による電磁波の放出」1.(2)2.です。
110-03

 上記“明らかである。”の意味は、109-02“遅延電位”“遅延ベクトルポテンシャル”の表現式を上記の波動方程式に代入して見れば、それを満足する事が確認できるということです。実際の計算は別稿「非同次波動方程式の一般解」3.(3)や、別稿「ポアソン方程式と波動方程式」2.などをご覧下さい。
 今日の教科書では、Maxwell方程式に電磁ポテンシャルの定義式を適用して導きますが、LorenzはMaxwell方程式を知らなかったので、遅延項が無いポテンシャルがPoissonの方程式を満足することからの推論で、遅延項を含むポテンシャルならば上記の非同次波動方程式の解でなければ成らないとしてこの形の波動方程式を導いたのです。このことに付いては別稿「Maxwell方程式系の先見性と電磁ポテンシャル」2.(2)1.のWhittakerの説明をご覧下さい。また、Poisson方程式と波動方程式の関係に付いては別稿「ポアソン方程式と波動方程式」を復習されて下さい。

111-01

111-02

 上記式変形については、別稿「電磁場の非同次波動方程式」3.(2)3.をご覧下さい。
112-01

 上記式変形については、別稿「電磁場の非同次波動方程式」3.(1)3.をご覧下さい。
112-02


 上記のローレンツは、もちろんH.A.Lorentzです。Lorentzは同じ論文の中で磁場に対する非同次波動方程式も与えています。面白いことに、Lorentzはこれら【電磁場に対するの非同次波動方程式系】を、ポテンシャルを消去して整理された【ヘヴィサイド・ヘルツの方程式系】から導いています。このことは別稿「電磁場の非同次波動方程式」2.(2)を参照。



113-03


補足説明1
 4.2節も解りにくい所です。今日良く知られている電磁場を記述する基礎方程式は、Maxwellが説明している方程式系とは違い4個の偏微分方程式にまとめられています。複雑に絡み合っていたMaxwellオリジナルの方程式系から、スカラーポテンシャルφとベクトルポテンシャルを取り除いて、今日のすっきりした形にととのえたのは、ヘヴィサイド(O.Heaviside)1885年とヘルツ(H.Hertz)1890年です。
 ところが、4.2節で説明されているLudvig Valentin Lorenzが展開した電磁気学は、Maxwell自身も、その中に本質が含まれているのではないかと予想していた、スカラーポテンシャルφとベクトルポテンシャルを用いた波動方程式を電磁気学の基礎方程式とする議論です。
 今日【ヘヴィサイド・ヘルツの基礎方程式系】と、【Lorenzのスカラー及びベクトルポテンシャルの非同次波動方程式系】は互いに他の形に移り変われますので、基礎方程式としては等価であることが解っています。そのため、そのどちらがより基礎的なのかはなんとも言えません。Maxwell自身もその当たりを見極め兼ねていたので、別稿で説明した様な考察でとどめています。
 実際、19世紀終盤には【Lorenzの展開した基礎方程式系】は忘れ去られてしまいます。それが復活するのは特殊相対性理論が発見されて以降になってからです。本節では、その当たりの事情が詳しく説明されています。 

 

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