ここで紹介するものは、Rudolf Julius Emmanuel Clausius(1822〜1888)の熱力学第2論文「力学的熱理論の第2主法則の修正された形について」(1854年)
の翻訳版で、八木江里監訳「エントロピーの起源としての力学的熱理論」東海大学出版会(2013年刊)からの引用です。
ただし、解りやすくする為に、私どもが、適当に章、節、項に分け、式変形を(矢印記入場所に)追記し、さらに(灰色囲み記事の)補足説明、等々・・・を付け加え、また文章の改行、段落分けに関してもかなり改変しています。そのため元の表現は別稿で引用している原本でご確認下さい。
これは、Clausiusのエントロピー概念の出発点となった論文だと言われていますが、極めて難解です。そのため、別稿で引用している山本文献3.第29章V〜[を別ウインドウで開かれて対比しながら読まれる事を勧めます。山本氏の解説は秀逸ですが、これも難解です。この論文については、理解できない所が多々あるのですが、取りあえずUPして繰り返し読み返して見ることにしました。
[補足説明1]
ここで説明している (2)式 と (3)式 の関係は解りにくいと思います。そのことについては、1850年論文の2.(3)3.[補足説明7]と、その直前の[補足説明6]をご覧下さい。
上記別稿の補足説明をご覧頂いたら解るように(2)式から出発して(3)式を導いたのは、“熱と仕事の等価性”を示す式としては、必ずしも明瞭でない(2)式から出発して、等価性を明瞭に示す(3)式を導いて見せたと言うことです。
(3)式が熱と仕事の等価性を表していることは、1850年論文の2.(3)3.[補足説明6]の(4)式をご覧頂ければ了解できます。
第2章は極めて難解なので、山本文献3.第29章V〜[に従って節に分割しています。ただし、山本氏の解説も私にはよく理解できないのです。
上記段落の意味は極めて解りにくい。山本文献3.第29章§Wを参照されたし。
以下の部分はは解りにくい。山本文献3.第29章§Wの最後の段落の解説を参照されたし。
以下の部分は最も解りにくいところです。山本文献3.第29章§Xの解説を参照されたし。
この当たりの展開について補足します。
Clausiusは熱力学に関係した考察をまとめた著書『Die Mechanische Wa¨rmetheorie』を1876年に出版しています。その Abschnitt V.§8.p87〜90 で、3つあるいは4つの熱浴を用いるタイプの熱機関サイクルを利用した考察を展開しています。さらに§9.ではThomsonに類似の(正確には断熱線群で分割する)やり方に拡張した説明もしています。そのためこちらの著書の説明なら理解できるかも知れませんので、どうぞ参照されて下さい。
また、原田義也著「化学熱力学(修訂版)」より引用した、別稿「熱力学第2法則とエントロピー」3.(6)〜(7)の説明の方が解りやすいかもしれません。
[補足説明]
ここの説明は非常に解りにくいが、要するにClausiusは、(U)式において導入された“絶対温度”Tが、数学で言うdQにたいする“積分分母”(積分因子)となっている事に気付いたと言うことです。
このことは、山本氏が解説されている様に、 Clausius が W.Thomson より先に進んだところでしょう。
サイクリックな積分がゼロになることが完全微分である事を保証することについては、別稿「絶対温度とは何か」5.(3)2.、あるいは別稿「『熱力学』とは何か」2.(1)を参照されて下さい。
上記*)の(W)式については別稿「Clausiusの1850年論文}3.(2)1.を参照されたし。要するに、そこの (W)式 と前記の (13a)式 が同じものであるとすると(14)式の関係が導かれるということです。