“速度ベクトル”、“加速度ベクトル”の3次元極座標(球座標)成分表示が必要になることがしばしばあります。ここでは荒木俊馬著「天体力学」恒星社厚生閣(1980年刊)p13〜14を利用してその求め方を説明します。
ただし、θの取り方をz軸からの角度に変更しました。xy平面からの角度をθとする場合は荒木文献をご覧下さい。
図から解る様に(x,y,z)座標を極座標(r,θ,φ)であらわすと
となる。これは位置座標の直交座標成分(x,y,z)を極座標で表したものです。
(1)式の両辺をtで微分すれば
となる。これは速度ベクトルの直交座標成分(vx,vy,vz)を極座標(r,θ,φ)で表したものです。
さらに(2)式の両辺をもう一度tで微分すれば
が得られる。これは加速度ベクトルの直交座標成分(ax,ay,az)を極座標で表したものです。
“速度ベクトル”の極座標成分表現式を求める。まず、座標r,θ,φの変化の正方向に沿っての“速度ベクトルの成分値”を求める。それをするには下図を検討すれば良い。下図の赤矢印が“速度ベクトル”を表していると考えて下さい[拡大図はこちら]。
図の速度成分表示を些細にに検討すれば解る様に、“速度ベクトル”の(r,θ,φ)方向に関して
このことの意味が解りにくい方は先に2次元の場合の2.(2)の図をご覧下さい。これらの寄与を加え合わせれば直交速度成分を用いたの(r,θ,φ)方向の成分表示となる。
すなわち
となります。ただし、“速度ベクトル”の意味を考えたら、この結果
は当然で、上記の様な面倒な手順を踏まなくても直ちに導けます。
しかし、次節で説明する加速度の極座標成分表示を得るには、この手順が必要です。
“加速度ベクトル”の極座標成分表示を得るには、前節と同様な手順をたどれば良い。前節図中の赤矢印をそのまま“加速度ベクトル”と読み替えて前節と同様な考察をすれば、座標r,θ,φの変化の正方向に沿っての“加速度ベクトルの成分値”は以下で示される。
これは1.(2)節の式と全く同じですが、1.(2)節式中のを
に変更する必要があります。
今度は、上式のに(2)式ではなくて、次の(3)式を代入する事になります。
加速度成分の算出は速度成分の場合よりもかなり面倒ですが、ひたすら計算するのみです。そのとき、以下の性質
を繰り返し用いると、最終的に座標r,θ,φの変化の正方向に沿っての“加速度ベクトルの成分値”は以下で示される。
すなわち
となる。
実際の問題では、2次元平面上の極座標表示で論じる場合が多い。その場合には上記の説明はかなり簡略になる。2次元では、3次元の説明文でθ=π/2と固定して、dθ/dt=d2θ/dt2=0、cosθ=0、sinθ=1とすれば良い。このことに注意して3次元の説明をなぞってみると以下の様になる。
図から解る様に(x,y)座標を極座標(r,φ)で表すと
となる。これは位置座標の直交座標成分(x,y)を極座標(r,φ)で表したものです。
(1’)式の両辺をtで微分すれば
となる。これは速度ベクトルの直交座標成分(vx,vy)を極座標で表したものです。
さらに(2’)式の両辺をもう一度tで微分すれば
が得られる。これは加速度ベクトルの直交座標成分(ax,ay)を極座標で表したものです。
“速度ベクトル”の極座標成分表示式を求める。まず、r,φの変化の正方向に沿っての速度ベクトルの成分値を求める。それをするには下図を検討すれば良い。下図の赤矢印が“速度ベクトル”を表していると考えて下さい。
図の速度成分表示を些細にに検討すれば解る様に、“速度ベクトル”の(r,φ)方向に関して
これらの寄与を加え合わせれば直交速度成分の(r,φ)方向の成分表示となる。
“加速度ベクトル”の極座標成分表示を得るには、前節と同様な手順がたどれば良い。前節図中の赤矢印をそのまま“加速度ベクトル”と読み替えて前節と同様な考察をすれば、座標r,φの変化の正方向に沿っての“加速度ベクトルの成分値”は以下で示される。
これは2.(2)節の式と全く同じですが、2.(2)節式中のを
に変更する必要があります。
今度は、上式のに(2’)式ではなくて、下記の(3’)式を代入する事になります。
そのとき、以下の性質
を繰り返し用いると、最終的に座標r,φの変化の正方向に沿っての“加速度ベクトルの成分値”は以下で示される。
この稿を作るに当たって、下記文献を参考にしました。感謝!