戸田盛和著「相対性理論30講」朝倉書店(1997年刊)の第26講(p190〜199)より引用。ただし、少し改変しています。
Einsteinが一般相対性理論により水星の近日点移動の謎を解明した1915年11月18日論文は別稿「アインシュタインの重力場方程式」4.で引用・紹介しています。
上記(2-1)式及び(2-2)式の左辺は「3次元極座標での速度ベクトル、加速度ベクトルの成分表示」2.(3)を参照されたし。
これは2階常微分方程式の典型的な形です。その解が下記の形で表されることは、その解を(4)式に代入して見ればすぐに確認できます。
[補足説明1]
(2-1)式から(4)式及び(5)式を導く手順は「楕円軌道の発見と万有引力の法則」5.(3)1.で説明していますので参照されたし。(5)式を求めるには上記以外に、そこの5.(3)2.や、「二体問題」1.(2)など、種々の解き方があります。
いずれにしても、Newton理論から得られる(5)式では、太陽引力によって近日点移動が生じることを導く事はできません。
現実に存在する近日点移動は、他の惑星からの引力によるものとして、そのほとんどが説明できるのですが、それらによつてどうしても説明できない部分が残ったのです。このことについては、Sciama文献「一般相対性理論」第8章をご覧下さい。
この説明できない部分が、3.で説明する一般相対性理論で解決されます。
“ラグランジュ関数”Lが(7)式となる事については、「相対論的力学」2.[補足説明6]を参照。また、速度v2の表現については「3次元極座標での速度ベクトル、加速度ベクトルの成分表示」2.(2)を復習されたし。
[補足説明1]
(14)式につて補足します。両辺に惑星の質量mを乗じると
となるが、(4)式の導かれ方を復習すれば明らかな様に、(14)式は太陽の周りを公転する惑星の質量m0が、運動物体の質量は増加するという特殊相対性理論の効果により、見かけ上
に成ったとして議論するものです。
これは、丁度「ブラックホール近傍の力学」3.(4)2.[補足説明1]に於いて(2.16)式の効果だけを考慮するものに相当します。しかし、そこの(2.21)式に相当する効果が考慮されていません。
次に説明されている様に、“エネルギー”Eが(15)式(“Hamilton関数”H)で表現できることは「相対論的力学」2.[補足説明6]を復習されたし。また、(16)式の形の微分方程式を改めて求めるのは、それに続く考察には(14)式よりも(16)式の形の方が便利だからです。
以下の議論は、(17)式が楕円軌道を表すメカニズム(cos関数の働き)を考慮すれば、理解できます。
[補足説明2]
(21)式の近日点移動量は、次章の末尾で注記されている様に、今日の正しい移動量計算値の1/6程度を与えます。おそらくここで、紹介されている(21)式を導く計算が、1906年当時Einsteinが試みたものでしょう。
そのときの事情に関しては内山龍雄「アインシュタイン選集2」についての解説のこの説明をご覧下さい。
上記の“測地線方程式”を用いるやり方は別稿「テンソル解析学の一般相対性理論への応用」7.(8)をご覧下さい。
この当たりの手順は「ブラックホール近傍の力学」3.(2)を参照されたし。
[補足説明1]
最後に得られた(38)式は別稿「テンソル解析学の一般相対性理論への応用」7.(8)で最終的に得られた微分方程式と全く同じです。
ここで、《Newton力学の(4)式》、《特殊相対性理論の(14)式》、《一般相対性理論の(38)式》を比較して見られたし。
[補足説明2]
(40)式を仮定して、(41)→(47)式の手順で求める近似的解法は別稿「テンソル解析学の一般相対性理論への応用」7.(9)1.と同じですから、そこを復習されて下さい。
また、Einsteinが用いた近似的解法は1915年11/18源論文[補足説明4-1]〜[補足説明4-2]をご覧下さい。
今日では、数値計算法を用いれば近似を用いないで厳密に解くことができます。そのやり方については別稿「ブラックホール近傍の力学」3.(4)9.をご覧下さい。
また、次文節の長軸半径a0、離心率εと l との関係式は別稿「水星の近日点の移動に対する一般相対性理論による説明」2.[補足説明5]を参照されたし。
[補足説明3]
(48)式を、別稿「水星の近日点の移動に対する一般相対性理論による説明」2.[補足説明5]で説明した関係式
を用いて変形すると
となる。これがSciama文献「一般相対性理論」p138で説明されている式です。すなわち
の様に、長軸半径aと短軸半径bの関数の形で表せます。
文中の水星近日点移動量の詳細については、Sciama文献「一般相対性理論」第8章をご覧下さい。