一般向けの啓蒙書ですが極めて含蓄深い本です。一般相対性理論への導入としてこの第2部の説明に勝るものは無いと思います。ここでは第2部と第3部のみ引用していますが、前書や第1部は目次のリンクをたどって別稿をご覧下さい。
また、リンク(2)〜(11)はBorn「相対性理論」第Z章からの引用です。Bornはアインシュタインのこの本を踏襲して説明していますので、この本を補足するものとして引用しています。
第1部 特殊相対性理論について
1.幾何学の諸定理の物理学的内容
2.座標系
3.古典力学における時間と空間
4.ガリレイ座標系
5.相対性原理(狭義の)
6.古典力学にもとづく速度の加法定理
7.光の伝播法則と相対性原理との見かけ上の不一致
8.物理学における時間の概念について
9.同時性の相対性
10.空間的距離の概念の相対性について
11.ローレンツ変換
12.運動している棒と時計の挙動
13.速度の加法定理−フィゾーの実験
14.相対性理論の発見法的価値
15.相対性理論の一般的成果
16.特殊相対性理論と経験
17.ミンコフスキーの四次元空間
第2部 一般相対性理論について
18.特殊および一般相対性理論
19.重力場
20.一般相対性公準の論拠としての慣性質量および重力質量の同等性
21.古典力学と特殊相対性理論の根拠はどれほど不満足なものであるか?
22.一般相対性原理からのいくつかの結論
23.回転基準体上の時計と測量棒の関係
24.ユークリッドおよび非ユークリッド連続体
25.ガウスの座標
26.ユークリッド連続体としての特殊相対性理論の時空連続体
27.一般相対性理論の時空連続体はユークリッド連続体ではない
28.一般相対性原理の厳密な定式化
29.一般相対性原理にもとづく重力の問題の解法
第3部 全体としての世界の考察
30.ニュートン理論の宇宙論上の困難
31.有限だが境界のない宇宙の可能性
32.一般相対性理論にもとづく空間の構造
附 記
1.ローレンツ変換の簡単な導き方(第11章の補足)
2.ミンコフスキーの四次元世界
4.一般相対性理論と関連した空間の構造
5.相対性と空間の問題
[補足説明1]
特殊相対性理論のように互いに等速度運動をする基準系に対して物理法則の相対性原理が成り立つことの拠り所が“光速度不変の原理”であった。まさにこの物質世界の相互作用は電磁的な相互作用であり、光がその媒体として中心的な働きをする。つまり特殊相対性理論とは光の理論であり、電磁気学の理論なのです。
そのとき、光の性質を記述するMaxwellの方程式はまさにローレンツ変換に対して不変であり、光速度は互いに等速運動をするあらゆる基準系(基準体)に対して同じ速度で伝播した。そのときそれらの基準系(基準体)間を繋ぐ変換式がローレンツ変換であったし、Maxwellの方程式はローレンツ変換に対して不変な形をしていた。
“相対性原理”を特殊(互いに等速度運動をする座標系間で言える)から一般(任意の加速度運動を含む座標系間で成り立つ)に拡張するに当たって、特殊相対性理論に於いて果たしていた“光”の役割が、一般相対性理論に於いては“重力”なのである。つまりアインシュタインは重力をその中に取り込めば、互いに加速度運動をする基準系(基準体)間に於いて“一般相対性原理”がなりたつ理論が構築できるだろうと予想した。
それでは、一般相対性理論に於いて光(電磁気学理論)の役割はどうなるのであろうか。第22章で述べているように重力は元々電磁的な力に比べて極めて弱い小さな力です。そのため重力場の影響は大局的には無視できるので、一般的な普通の自然現象に関してはそのまま特殊相対性理論が利用できるだろうというのである。中性子星やブラックホールの様に極端に質量が集中している様な領域を除いて、あるいは双子のパラドックスに出て来るような極端に大きな加速度運動などの状況を除いて、この世界は大局的な意味に於いて特殊相対性理論の枠組みで十分正確に記述できる。
1.重力とは何か。安藤正樹氏の説明を引用。
2.重力が電気的な力に比べてどんなに弱い力か。Bornの見積もり計算を引用。
3.電気的な力は普段は正負が厳密に釣り合っていてその強大な力が封じ込まれている。ファインマンの説明を引用。
もちろん恒星の近くを通過する光線はごく僅かの屈曲を示したり、恒星のごく近くを回る(水星のような)惑星の公転軌道にはごく僅かな近日点移動が生じたり、恒星表面から届く光にごく僅かな赤方変移が生じたりはするが、それらは特殊相対性理論が予測する結果からのごく僅かな偏差として現れるだけです。(第22章のp92)
しかしながら、あらゆる加速度運動をする基準系(基準体)を一般相対性原理が成り立つ等価な系と見なせるように重力理論を作り直すのは、極めて数学的に複雑で困難なものになるだろうと予想される。なぜならそれぞれの基準系(基準体)の加速度運動には任意の形があるからです。
その複雑さに比べれば、“光速不変の原理”さえ満たせば良かった特殊相対性理論の枠組み(つまりローレンツ変換に対して不変性が成り立つミンコフスキーの4次元時空)は単純で解りやすいものに見える。
だから、“一般相対性原理”と完璧な整合性をもつ重力理論を作り上げるには極めて複雑な“時空連続体の概念”を用いなければならないだろう。それがまさに、第22章の最後の文節及び第23章でアインシュタインが述べている事柄です。
[補足説明BornZ-02]
この当たりの事情をBornは著書「アインシュタインの相対性原理」第Z章の中で説明しています。繰り返しになりますがBornの説明も引用しておきます。
[注*への補足]
実際、ニュートンの重力理論では上記の様な重力場を生じる質量の空間配置は存在しません。回転円盤の中心を中心として周囲に球殻状に質量を分布させても、別稿で説明したようにその内部には重力場は存在できません。円筒状に分布させてもその事情は変わりません。このことについては(9)を参照されたし。
[補足説明BornZ-03]
この章の例はアインシュタインが最初に提示したもので、一般相対性理論への導入として有名です。Bornもこの例を取り上げて著書「アインシュタインの相対性原理」第Z章の中で説明しています。繰り返しになりますがその部分を引用しておきます。
[補足説明BornZ-04]
この章の内容をBornはもう少し補足しています。彼の著書「アインシュタインの相対性原理」第Z章から、その部分を引用しておきます。
[補足説明BornZ-05]
Born文献からの引用を続ける。
上記の*付録はこちらのリンクを参照されたし。
[補足説明BornZ-07]
ここも「アインシュタインの相対性原理」第Z章からBornの説明を引用しておきます。文中に注記している第Y章の記述はこちらを参照を参照して下さい。
[補足説明BornZ-08]
ここも「アインシュタインの相対性原理」第Z章からBornの説明を引用しておきます。
“ゼーリガーのバラドックス”に付いては別稿「二体問題」3.(2)もご覧下さい。なおこの ゼーリガー は別稿「連星の軌道要素決定法」2.(3)で説明している人です。
[補足説明BornZ-09]
ここも「アインシュタインの相対性原理」第Z章からBornの説明を引用しておきます。
[補足説明BornZ-10]
アインシュタインによる上記の附記は後の改訂版(1920年の第10版以降の版)に付け加えられたものですが、Bornも「アインシュタインの相対性原理」の1964年改訂版の第Z章でより詳しく説明していますのでそれも引用しておきます。それぞれの記述がなされた時期に注意されてお読み下さい。
[補足説明BornZ-11]
Born文献の引用を続ける。
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