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生態学的地位における有袋類と有胎盤類の対応

 今日、有袋類は南米とオーストラリア大陸にしか存在しないが、化石としては北米とヨーロッパの中生代と古第三紀の地層から発見されている。また古第三紀の有袋類の化石が南極、アフリカ、アジアからも発見されている。
 これらの化石の産出状況と大陸移動の時期を考えると、有袋類の祖先はたぶん、中性代の終わりに北米で進化したのだろう。そして新生代に入ってすぐに南米に進出した。そのころの化石が北米と南米の両方から見つかっている。

 当時の気候は温暖な状況で、南極にも北極にも氷河は存在しなかっただろう(石炭紀・二畳紀は寒冷化した時期で南極は巨大な氷河で覆われていたが)。そのため南米に入った有袋類は古第三紀の早い時期に、当時陸続きだった南極、オーストラリア大陸に分布を広げた。旧大陸では、その後現れた有胎盤類により有袋類は滅びてしまうが、孤立した大陸のオーストラリアと南米の一部に有袋類は生き残った。
 そのため旧大陸では有胎盤類が占めた生態学的地位を、オーストラリア大陸では有袋類が占めた。以下の図は各ニッチェにおける対応関係を示す。

 最近、複数の分子に対する哺乳類の遺伝子解析(スプリンガーら、3つのミトコンドリア遺伝子、2つの核コード遺伝子)から、上に述べた有胎盤類と有袋類との関係が、異なった大陸に生息する有胎盤類の間でも存在することが解ってきた。
 それは、中生代の中頃から始まった超大陸パンゲアの分裂により、中生代後半にはお互いに分離してしまった大陸の形成に関係する。大陸移動により南米大陸、北米・ユーラシア大陸、アフリカ大陸、南極・オーストラリア大陸に分かれてしまって以降は、それぞれの大陸の固有種がそれぞれの大陸で進化し、特に中生代末の恐竜類の絶滅で起こった爆発的進化では大陸ごとに異なった起源の哺乳類があらゆるエコロジカルニッチェに適応放散したらしい。
 そのため今まで各大陸で同じようなニッチェに生息し、同じような形態のためお互いに近縁の有胎盤類と考えられていたもの(例えばハリネズミやモグラのような食虫類)が、系統的には非常に古い時代(大陸が分離した当時)に分岐した遺伝学的に遠縁の関係である事が解ってきた。各大陸の有胎盤類はむしろ、異なったニッチェに生息し、形態的にはかなり異なってはいても同じ大陸に生息する動物の方に遺伝学的には近かったのである。つまり、異なった大陸に住む同じような動物よりも、同じ大陸に住む異なった動物との分岐年代の方がはるかに新しかったのである。

 これらの適応放散と適応収斂の関係は、生物がまさに中立的突然変異の統計的ゆらぎによる種内固定による偶然の積み重ねであらゆる方向に進化して行くことを強く示唆している。

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