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マルサスの「人口論」

 自然科学を学ぶ者から見ると、こういった社会科学的な文献は論理の正当性が判断しがたく、読んでも何が言いたいのかよく解らない。
 ただ確実に言えることは、私が高校生(1964年)のとき教えられた世界の人口は36億だったが、今日(2008年)の人口は67億に迫ろうとしている。おそらく6000年前の縄文時代には世界の人口は数百万〜数千万程度で、森や林や草原の中に、猿もいれば猪や鹿もいる。その中に人間もちらほらいるという状況だったのだろう。だが現在は地球上のどこを見ても人類だけが異常に繁殖してはびこっている。まさに恐るべき状態になっている。
 確かに、マルサスの論理は未熟で反動的でその論理性に疑問符がつくかもしれないが、ダーウィンの自然選択説には多大な影響を与えただろうことはうなずける。そして、今こそマルサスの人口論的な考察を真面目に科学的にしなければならない時代なのかもしれない。

 以下に初版人口論(Thomas Robert Malthus著)の章立てを記す。マルサス著、吉田秀夫、佐藤昇訳「初版人口論」河出書房(昭和30年発行)から抜粋。

1.初版人口論(1798年)

《人口の原理に関する一論、それが社会将来の改善におよぼす影響、ならびにゴドウィン、コンドルセ、その他の著作家たちの思索についての所見》(匿名、1798)

第1章
 人口から生じる困難な性質・・・・本文中の主要な主張の概観。

第2章
 人口と食物との増加率の差異・・・・この増加率の差異の必然的結果・・・・この差異から生じる社会の下層階級の状態の変動・・・・この変動は何故、当然予想されるほど十分には観測されなかったか・・・・本論文の一般的主張の基礎となる三つの命題・・・・この三つの命題に関連して検討されるべき人類の経てきたと知られている相異なる初段階。

第3章
 野蛮ないし狩猟状態の概観・・・・牧畜状態またはローマ帝国を席巻した野蛮諸部族・・・・生活資料に対する人口増加力の優越性・・・・北方移住の大潮流の原因。

第4章
 文明諸国民の状態・・・・現在、欧洲はジュリアス・シーザーの時代より人口調密であろう・・・・人口の最良の基準・・・・ヒュームが主張Lている人口計算の一基準はおそらく誤まっている・・・・大低の欧洲諸国における現在の人口増加の停滞・・・・人口に対する二つの主要な制限・・・・英国について検討された第一の制限、すなわち予防約制限。

第5章
 英国について検討された人口に対する第二の制限、すなわち積趣的制限・・・・イソグラソドにおいて貧民のために集められた巨額の基金がかれらの状態を改善しない真の理由・・・・救貧法にはその真の目的を妨げる傾向がある・・・・貧民の困窮を緩和する提案・・・・我々の性質にかんする固有の法則から、杜会の下層階級から貧困の圧迫を完全に除去することは絶対に不可能である・・・・人口を抑制する一切の要素は窮乏と悪徳に還元されよう。

第6章
 新植民地・・・・その急速な人口増加の諸原因・・・・北アメリカの植民地・・・・奥地植民地における異常な人口増加の例・・・・古い国でも戦争、疫病、飢餓、天災による人口の荒廃からは急速に回復する。

第7章
 伝染病の蓋然的原因・・・・ジュースミルヒ氏の表の抜粋・・・・特定の場含には疾病流行季節の週期が予想される・・・・一国の短期閲における出生対埋葬の比率は人口の実際の平均的増加の基準としては不適当である・・・・人口の永続的増加の最臭の基準・・・・非常につつましい生活様式は支那及びインドの飢餓の一原因である・・・・ピット氏の救貧法の一条項の弊害・・・・人口増加の唯一の適当な奨励策・・・・諸国民の幸福の諸原因・・・・自然が過剰人口を抑圧するための最後の、もっとも恐るぺき方法・・・・確定的と見たざれる三つの命題。

第8章
 ウォーレス氏・・・・人口から起る困難は遠い将来のことだと考えるのは誤っている・・・・人間精神の進歩に関するコソドルセ氏の概説・・・・コンドルセ氏によって述べられた振動が人類に適用される時期。

第9章
 人間の肉体的完全化と人間の寿命の不定限な延長にかんするコソドルセ氏の臆説・・・・動物の飼育と植物の栽培の例にみられる限界を指示できない部分的改良から無限の進歩を推定する主張の誤謬。

第10章
 ゴドウィン氏の平等主義・・・・人類のあらゆる悪徳を人間の制度に帰するのは誤りである・・・・人口増加から生ずる困難に対するゴドウィン氏の最初の回答は不充分でおる・・・・ゴドウィン氏の美しい平等主義が実現されたと仮定Lた場合・・・・その杜会はただ人口の原理だけから三十年間といった短期閥に完会に崩壊する。

第11章
 両性間の情欲は将来絶減するというゴドウィン氏の臆説・・・・こうした臆説には殆ど明白な根拠がない・・・・恋愛の情熱は理性とも徳性とも矛盾しない。

第12章
 人類の寿命の不定限な延長にかんするゴドウィソ氏の臆説・・・・種々の実例に見られる人体に及ぽす精神的刺激の劾果からの誤った携論・・・・過去の事実に根拠をもたない臆説は学問的な臆説とは見なし得ない・・・・人類は地上における不死に近づいているというゴドウィソ氏及ぴコソドルセ氏の臆説は懐疑主義の矛膚を示す奇妙な一例にほかならない。

第13章
 ゴドウィソ氏が人間を理性的存在とLての面からのみ考察しているのは誤っている・・・・混合的存在である人間においては、情熱が常に悟性の判断に対する擢乱力とLて働くであろう・・・・強制の問題にかんするゴドウィン氏の推論・・・・或る種の若千の真理は人から人へ伝えることができない。

第14章
 ゴドウィン氏の政治的真理にかんする五つの命題、彼の全著作はこれにかかっているが、証明されてはいない・・・・人口の原理から生じる困難のため人類の悪徳と道徳的弱点とを完全に根絶することば決してできないと我々が想像する理由・・・・コドウィン氏が用いているよう意味での完全化ということは人類には適用されたい・・・・人開の完全化の真の可能性の例証。

第15章
 あまり完全な手本は往々、改善を促進するよりもむLろそれを阻害するおそれがある・・・・ゴドウィン氏の貧良欲及び奢侈(しゃし)論・・・・杜会の必要労働をすべての者の閲に仲良く分配することは不可能である・・・・労働に対する罵倒は、当面の弊害を生み出すだけで、将来の善はほとんど或いは全く生み出さない・・・・農業労働を大いにおこすことは常に労働者に利益をあたえるに違いない。

第16章
 アダム・スミス博士が、一杜会の収入ないし資本の増加はすぺて労力を維持するための基金の増加だと説いているのは恐らく誤りであろう・・・・富の増加が労働貧民の状態を改善する傾向をもちえない実例・・・・英国の富の増加は、労働を維持するための基金の比例的な増加を伴っていない・・・・支那における貧民の地位は工業から得られる富の増加によっては改善されない。

第17章
 一国の富の適当な定義に関する問題・・・・フランスの経済学者が全工業従事者を非生産的労働者と見なLた理由は真の狸由ではない・・・・手職人・製造業者の労働は国家にとっては生産的ではなくても、個人にとっては生産的であり得る・・・・プライス博士の「観察」二巻中の注目すべき一節・・・プライス博士がアメリカの幸福と急速な人口増加の原因を主として文明の特殊な状態に帰Lているのは誤っている・・・・社会の改善の前途に横たわる諸困難に眼を閉じることからはどんな利益も期持できない。

第18章
 人口の原理から生じる困難の人類に対する不断の圧迫は我々の希望を来世に向げさせるように思われる・・・・人生は試煉の場だという考えは神の先見に対する我の観念と一致しない・・・・世界は多分、物質を精神に眼覚めさせる一大過程であろう・・・・精神の形成にかんする理論・・・・肉体の欲望から生じる刺激・・・・一般的法則の作用から生じる刺激・・・・人口の原狸から生じる生活の困難に基づく刺激。

第19章
 人生の悲哀は心情をやわらげ、教化するために必要である・・・・社会的同情の刺激はしばしば単に才能を持つだけの人間より高尚な人物を生み出す・・・・道徳的な悪はおそらく道徳的善を生み出すために必要である・・・・知的欲望による刺激は自然の無限の多様性及び形而上の間題の不明確さによって絶えず維持されている・・・・この原理によって啓示の難解さを説明することがでぎる・・・・聖書に含まれている証拠の程度は人間の能力を改善し、人数を徳性を向上させるのに最も適Lた程度であろう・・・・精神は刺激によって形成されるという思想は自然的、道徳的悪の存在を説明し得るように思われる。

2.第2版以降の「人口論」

 「人口論」第2版《人口の原理に関する一論、人類の幸福に対するその過去および現在の影響に関する一見解、ならびにそれが引き起こす諸悪の将来の除去あるいは軽減に関するわれわれの見通しについての一研究》(マルサス、1803)

 第2版では大幅な改訂がなされています。内容の詳細についてはネット上に沢山資料があるのでそれらを参照されたし。
http://www.aozora.gr.jp/cards/001149/files/43550_17224.html
http://www.aozora.gr.jp/cards/001149/files/43551_17225.html  

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