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ボーアの水素原子モデル(1913年)

 ボーアの原子モデルは高校物理の最後で習います。しかし教科書の説明は今ひとつわかりません。そのわからない所を説明します。

1.量子条件と振動数条件

すべての出発点は[ラザフォードの原子模型][ニュートンの運動法則F=ma]である。それに[電気のクーロン法則][円運動の向心加速度式]を適用する。(ラザフォードの原子模型はこちらを参照)

 つまり(B)式は原子がみな同じ大きさを持つべき事実を説明するために導入された。(同一種の原子がみな同じ大きさだということは当時常識となっていた)
 (A)式はラザフォードの原子模型から考えられる当然の式なのだが、この式だけからはを決めることはできない。を変えればは任意の値を取れるのだから。そのとき長さ(原子の大きさ)を規定しうるような普遍定数は何だろうか?1911年当時、新しい考え方に通じている人々にとってそれはプランク定数h以外には考えられなかった。そこでボーアが与えた式が(B)であった。(1913年)

 この形を探し当てるまで1912年当時のボーアは悶々としていた。その時友人のハンス・マリウス・ハンセンが、あなたのモデルではスペクトルはどうなるのかと聞いた。(1913年の初め)ボーアはそのとき何とも言えないと答えたが、ハンセンはバルマーの公式をのぞいてみてはと勧めた。ボーアは「バルマーの式を見ると、たちまち私にはいっさいが明らかになった」と言っている。

 そのときボーアは[原子中の電子は様々な飛び飛びのエネルギー状態(つまりいろいろな軌道半径)を取り、そのエネルギーの間の遷移には輻射が伴い、その輻射の振動数とエネルギーの間の関係は光量子仮説で与えられるものである]という第2の仮説

    

を設けて、第1の仮説(B)式の形

    

にするとすべてがうまく説明できることに気付いた。(B)を導くとき用いたのが「対応原理」である。
 この2つの仮説は古典論に矛盾するが、ボーアはやがて真に正しい理論がわかったときには、それらの矛盾は解決されるはずだといって、その物理的矛盾には目をつぶって、その命題の数学的正しさだけをたよりに理論をおしすすめていった

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2.数学的展開

(1)(2)の条件式を仮定するとすべての事柄がいかにうまくおさまるかを説明する。

軌道半径の導出

(注意1)水素原子の大きさ

バルマー公式の導出

(注意2)リュードベリ定数R

(注意3)水素のイオン化エネルギー

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3.図上での関係

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4.ボーアが量子条件(1)2πr=nh/mvを見つけた手順(対応原理)

(1)エネルギー準位と量子数

 ボーアは以下のように考えた。まず原子中の電子は様々なとびとびのエネルギー状態(つまりとびとびの軌道半径)のみが許される。次に、そのエネルギー状態間の遷移には輻射が伴い、その輻射の振動数とエネルギーの間の関係はアインシュタインの光量子仮説を満足するとした。つまり

(2)対応原理

 次に、nが大きい場合Eもおおきく、電子の軌道半径は非常に大きくなり電子は自由電子に近づく。そのときn→n’の遷移で nが1つだけ異なる隣の軌道 n’へ移る場合、軌道半径が非常に大きいので E/h と En+1/h との差は非常に小さくなり、円運動をする電子は円運動による振動数に伴う電磁波を放出(当然その振動数は電子の回転数に等しい)して、エネルギーを失いながら連続的に軌道半径を縮小させながら中心に向かって落ちていくと考えた。
 つまりエネルギーの変化が連続的だと見なせたり、電子が原子内のような小さな領域に束縛されているのではなくて自由電子に近いと見なせるような場合には古典的な電磁気学の理論が使えると考えた。このような考え方を「ボーアの対応原理」という。

ここでnが大きい場合は放射される光の振動数νはn番目の軌道を円運動する電子の回転の振動数

に等しいとおけるとすると(ボーアの対応原理)

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5.補足

ド・ブロイの仮説

 高校物理では量子条件(1)の根拠としてド・ブロイの物質波の仮説を用いて説明しますが、その様な解釈ができると解ったのはずっと後(1924年)でした。
 ド・ブロイは特殊相対性理論から導かれる[運動物体のエネルギー]を光量子とのアナロジーで[振動数]に対応させ,一般の粒子も運動エネルギーE=hν、運動量p=h/λを持つとした。つまりp=mvとするとh/mv=λになる。そのため量子条件(1)は

バルマーの公式

バルマーは1884年に水素原子の可視光におけるスペクトル線の波長を調べてその間に成り立つ驚くべき関係を見つけた

ここでの議論にはリュードベリがしたように波長λの逆数の方が便利。

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